M&SSの再起動ー13(マカオ科学館の岸壁で受け渡し)
30分後に本館前に集合
ヤン局長の一声で解散し、入出境事務廰に戻ると香港組4人が事務所から出て、待った顔には笑顔が無い。
「やぁ元気そうだね」と声を掛けたが反応が弱い
杉原さんがみんなを入境審査庁の事務所脇に集め
「先ほど会議が終わってからヤン局長がこの事案の処理について、大事な決定をして呉れました」
【私たちは公式では無く影の人で、最終的には所用で来た日本人と外人さんのトラブルで、入境審査庁も治安警察局も預かり知らぬ事案で処理するので、総領事館の皆さんも居なかったことにした方が、マルク収まりそうだね】と言って呉れた。
ここで、今回のチーム編成を解散し、今晩の被疑者確保も外国で動くにはかなり際どい作戦だが、幸い地元の皆さんの好意で目途が付きそうだ。
地元から参加して頂いた総領事館の皆さんには、このことは見なかったことにして、記録も残さず報告なしで処理して下さい。
夜中になると思いますが、総領事には連絡を差し上げますから、山田書記官は非公式で2日間の業務は非公式で文書にせず口頭で報告してください。
此れからバタバタとしますから、ここで解散します。神田さん山田さんどうですか?」と聞くと、山田さんが神田さんの顔を見てサインし
「今までこんな経験は有りませんでした、これも外地勤務では果たすべき職務で有ることを認識できました」
「大事なことだと痛感しました」
「杉原さん・神田さん有難うございました」と目頭を押さえなら丁寧に礼を云った。
「30分後にに被疑者確保に向かいますから、軽く摘まむものが有れば~」と杉原さんの声に、シンディ―が自分で顔を指差して、紹介して呉れとせがんでいる。
「あっごめんうちのチームの女神さまの紹介を忘れて居ました、マカオの実業家リィー・シンディ―嬢です」杉原さんが紹介。
香港チームはみなポカンとした顔で眺めて居たが、神田さんが動く「東京から来た神田と言います」と握手した。
二階堂警部も何か言いそうだが、「同じく二階堂といいます」
総領事館の山田さんは知って居たのか
「大人になったねシンディ―ちゃん、ではダメだねシンディ―さんかな」と握手する。
山田さんも大人になりましたねぇ」とおでこの後退した部分を触る。
「ハウさんも暫くです、ここでお別れのようですが又こんなお仕事が有ったらいいですね」と握手する。
シンディ―がカンさんに頼まれた買い物に行くので、何かを探している風だ。
「マイケルさんをお借りして良いですかね」とエスコートを指名する。
神田さんと、杉原さんが同時に頷く。
駐車場に向かう二人に杉原さんが後ろから「摘まむものを」と1万円札を出したがシンディ―が「円は面倒だから私が払って置きます」とサッサと歩いて行く。
残ったメンバーは、ひとまずリュー所長の会議室に入って、途中経過と今後の作戦会議に入る。あまり時間が無いので、杉原さんが経過と作戦を説明し、山田さん・ハウさん・グーさんはミーティングを終了して、香港行きのシャトル乗り場に向かう。
「山田さん、総領事に電話しますが上手く話して置いて下さい」と肩を叩く。
道路を右折すると中國珠海市だ
ベンツのワゴンは5分位で、ショッピングセンターのパーキングに入り
「マイケルさん使い立てして申し訳ないんですが、上の階に玩具売り場が有りますからこのメモを見せて2品買って下さい、私は食品売り場で摘まむものと銀行に寄ります」
「15分後にこの入り口で会いましょう、ここに香港ドルが1,000ドル有ります、間に合うはずですから」とお札を渡して離れる。
マイケルは早速案内ガールに声を掛けエスカレータに乗る。シンディーは何故かスポート用具店に向かっている。
外は日が落ちて、夕暮れの空がきれいだが、買い物組は忙しくて見る暇が無いが、約束の時間が迫る。
マイケルの方は同じ売り場で、一瞬で決まりユックリ店内を眺めなら下りのエスカレーターで降りてくると、シンディ―は大き目のスポーツバックと、食品売り場の大きなビニール袋を店員に持たせて、戻った所だ。
「間に合ったかな」と店員にチップを渡しビニール袋2つをマイケルに差し出す。
その代わり、マイケルのプラモデルとお人形の箱をスポーツバックに詰める。
マイケルがスポーツバックを肩に掛けチョット重い感じだ、ビニール袋を一つ持つ。
その時シンディ―のスマホが着信、
「催促だわ~」と言いながら開く
局長さんも遅刻かな
「はい丁度終わりました、後五分ですね、少し遅れますが局長に差し入れが有りますからと、宥めて置いて下さいね」
「あれっ局長も遅刻なの~わかりました。車は走り出しましたから直ぐです、ここで待って居ようかな」と冗談を言いながら前方をキチンと見ている。
「そうだわ、ここを通らないと科学館に行けないモノ」と独り言を言いながら、ワゴンは人工島の橋を渡って右サイドに曲がる。
政府機関の事務所は人工島の端の方に位置して居て、島に上陸しても4~5分かかる、警察の装甲護送車が今来たようで、同じタイミングで到着、万事OKとなる。
局長が車の傍に来て
「シンディ―ちゃん、私に差し入れを買いに行って居たんだってねぇ」とご機嫌がいい
「そうです、そろそろ、ディナーのお時間なのに、科学館までドライブはお気の毒なので、マイケルさんと仕入れて来ました、向こうへ着いたらお渡しします」
「それはご苦労様でした、マイケルさんもありがとうね」とマイケルに声を掛ける
「いやぁ私は運び屋ですから、何もしてませんでした」と笑う。
香港から来た連中は、局長ともシンディ―とも気軽に会話してるマイケルが羨ましそう
「それでは日も暮れて来たから、出かけましょうか、日本の方々はワゴンに収まりそうですね、所長さんパトカーと護送車どちらにしますか?」と局長が遠慮気味に聞く。
「未だ経験が無いですが、初めての護送車に乗せて下さい」と2キャブタイプの頑丈な護送車に乗る。
先頭を護送車で、次に警察車両が1台続き、ベンツのワゴンに8人乗ったが余裕がある。
走り出して直ぐ、パトロールカーの無線でカンさんのチャンネルに合わし呼び掛ける。
「こちらマカオのヤン・ワンヅです、感度確認! カンドカクニン!」呼び掛ける。
「はい 大変良好です、只今マカオ国際空港を左側に確認できます」
「 こちらは左にホテルやらカジノなど賑やかな孫逸仙大馬路を走っているから、もうすぐ科学館ですよ」
「了解しました、先ほど警備艇に併走して、局長さんと打ち合わせたことを話しました」
「どんな反応でした」
「艦長さんは前からの知り合いですから気軽に話せる人で【それは良かったですね、上からも余り目立つ場所には接岸するな、洋上で待機しろと言われて居ますから、高速道路の橋脚の脇で上陸を確認します、上陸を確認したら離岸します】と言って居ました」
「それでは手筈通り、少し薄暗いかもしれないが照明は付けないので、黒のワゴンがハザードランプを点灯している所に付けて下さい、いま科学館の脇から岸壁に向かって居ます、あぁ空港の照明でクルーザーと警備艇を確認しました、私たちは建物の脇に停車します、今シンディ―ちゃんがハザードを点滅させながら岸壁に向かって居ます」
「はいこちらからも、ワゴンがユックリ海に向かって来ます、局長有難うございます、後日事務所に顔を出します、警備艇に状況を連絡します」
「あぁシンディ―ちゃんが、おもちゃを買ったようだから,しっかり渡してあげて下さいね、さようなら」と無線を切る。
シンディ―の車は、岸壁のギリギリの所に停まる。
岸壁にはコンクリートの階段が水面まであり、ライトを付けたクルーザーは、階段を確認したようで少し方向を変えながら10メートル位で、エンジンを切りカンさんが外に出て小さなクッション材を三つ持ちって舷側に垂らす、錘を付けたロープを岸壁に投げた
シンディ―が外に出て、カンさんの投げた係留ロープを拾い、ガードレールのポールに結ぶ。
カンさんが舳先に周りロープを持って階段に飛び降りる。
ロープを固縛し、岸壁に立ちシンディ―に一言二言交しワゴンを見る、その時ワゴンからマイケルがスポーツバックを両手で持って近づいてくる。
お互いに無言で、シンディ―が受け取りカンさんに渡す
「シンディ―有難う、Mさん有難うございます」と深く頭を下げ階段を降り、バックを艇内に押し上げて、身軽に飛び上がって同時に艫の方に駆けて行く。
ドアを開けて、ゴソゴソやって足のロープだけを外した、30代の外人と東洋人の様な中年の男性を外に出し、後ろから捕縄をもったカンさんが始めて笑顔で、声を出した。
「二人の不審者を捕獲しました、日本の皆様お渡しいたします」とパトカー迄届く大きな声で、引き渡しを宣言した。
二人の不審者は、猿轡をしたまま目を白黒して居たが。観念したように下を向いた。
素早く接近した3人の警官が捕縄を受け取り
「カン・ソンシ様有難うございます、確かに受け取りました」神田警視応える。
局長のパトカーと護送車も近くに来て、神田警視と二階堂警部が、護送車に連れて行き、押し込んでいる。
「あの二人の荷物を持ってきます」とカンさんが再びクルーザーに戻り、大型のザックを持って来たが重そうだ。
マイケルと二階堂警部が静かに持ち上げ、ワゴン車に載せる。
神田警視が、戻って来てカンさんの傍に行き小声で
「今晩尋問するのですが、何か参考に成ることが有ったら、お知らせ願えませんかね」と、頼んでいる。
「特に思いつかないのですが、この船を私の艇庫に入れて戻り、ご一緒しても良いですよ」とイとも簡単に承諾して呉れた。
「じゃぁ時間と場所は後で電話しますから、警備艇にお礼をして下さい」
「そうね後で電話するからお家に帰って、お家族を安心させて」とシンディーが仕切る
ヤン局長が傍に寄り「カンさん有難うね、あなたは英雄ですから何時でも良いですから遊びに来て下さい」と笑顔で握手
「来るときは電話して下さいよ、美味しいワインが有ったら、忘れないでね」と局長もしっかりおねだりを忘れない。
「私の方も色々ご迷惑をお掛けしました、有難うございました」と握手しながら丁寧に頭を下げて礼を愛し、身軽にクルーザーに飛び乗る。
警笛を短く鳴らしクルーザーは岸壁を離れる。
海上の高速道下に係留している、公安の海上警備艇に近づいてゆく。