まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

M&SSの再起動ー16(カン・ソンシさんの苦渋)

マカオから羽田まで

マカオから香港経由羽田まで正味7~8時間で移動したが、香港総領事館には大変迷惑をかけた。

 

深夜便は空席が多く、杉原さんと神田警視が、客室乗務のスタッフに断り3人だけ離れて、カンさんが被疑者と会った場面などを詳細に聞いて、事案の核心を把握した。

 

 

手筈通り領海上空で逮捕状を執行、二人には大きなコートを被せ、横付けされた黒のワンボックスに乗せ、神田警視と二階堂警部が付き関係車両出口から首都高に入る。

 

杉田情報分析官とマイケル・カンさんは一般帰国者と同じように降りる。出口に柳原警部と新人の警部補が、M&SSのワンボックスで迎えに来ていた。

 

取り調べは比較的マスコミが近寄らない、府中の研修所を臨時の取調室に改造して省庁をマタガルその道のエキスパートを招集し、日夜極秘裏に尋問聴取した。

合同捜査会議

スタッフははM&SSが中心だが、外務省と法務省も関りが深いので、杉田情報分析官を筆頭に出入国管理事務所や厚労省防衛省の諜報関係の宮田一佐など普段なら霞が関でも顔を合すことが無いキャリアが、密接に検討する。

 

当然、カンさんも要所要所で参加し、供述をチェックしてリストアップ、自分が対応した部分の虚言を、取調官にその場で提出再度詰問する場面が多い。

 

カンさん見聞情報

①誰の紹介か不明だが高額の前金を米ドルで渡し行き先を明確に言わず、大陸沿いに南下して欲しい。

②クルーザーは馬力のあるレーダー、無線も多機能なモノが付いているもの。

③行程は3日から5日位で水と食料もそれなりに用意し、目的は外洋でフェッシングをやりたい。

④大陸の警備艇を躱すハンドル操作ができる船長。

⑤出港はマカオ南東部の漁港から目立たないように。

等々、条件が多く付いて居た。

 

カンさんは殆どの条件をパスできるが、不審を感じたので地元の役所に外洋に出る許可証を取ることを条件にOKした。

 

当初は、大陸の体制に反抗するグループかと考えたが、少し違和感が有る。

 

パスポートか在留許可証かビザか、証拠になるモノをコピーしないと提出出来ないから、貸して呉れと交渉したが【貸せないので自分が付いて行く】というので、アジア人の、アラブ系の男がトルコのパスポート出して許可証を取った。

 

出港は午前2時ごろ、二人の荷物はリックだけでマカオのタクシーで時間通り来たので、ゲスト用キャビンを提供する。他に2部屋ベット付きのキャビンはロックする。

 クルーザーの改造はこの機に備え

カンさんは、操舵室の脇の一室をオーナー用に改造し、特注の無線機・衛星電話機などをセット、12メートル未満ながら外洋航海船に匹敵する救命設備も装備し、突発事態に対応できるモノに装備は万全だ。

 

海岸線を南下しながら、台山市沖の上川島付近で行く先を変えると言うので無人の岩窟海岸に近づけエンジンを止めた。

 

中國とフィリピンの地図など資料を取り出し、英語で話し始める。

 

 

自分は中国語と英語が話せる言って置いたが、二人はフランス語で打ち合わせしながら【中國警備艇を避けて、ここの海峡を抜けてマリアナ諸島に向かえ】と命令的に切り出した。

 

それはダメだ、このボートは40Ftも無いんだ、フィリッピン海は2~3千メートルもあって大波に合ったら、たちまち引っくり返ると渋った。

 

 カンさんは相手の要請が想定通りだなと感じ、ここで前回は手つき金だから全額要求した。相手は、まだ目的地に到着しないから半額だと云い張る。

 

こんな危険なルートは、倍額でも誰も行かないと強気で言うと、80%まで払うと、アラファトが自室に行く。千ドル紙幣の束をポンと置いて、いつ出ると高飛車だ。

 

ここで海上の天候で条件が変わるが、と前置きして

最低でも20メートル(65Ft)以上ないと沖へ出れないよと、大波の間に入ったら命は無い、最低でもこれを身に付けて置けと、救命胴衣を2着渡した。

 

二人は顔を見合わせ、怖気付いたような感じが伝わる。

【これも効果的だなと、自己満足】

80%でも半年分の収益

一応80%を手にしたので、相手の地図を借りて、「東環礁公園島」からフイリッピンのバタン緒島へ向かい、天気を見て風が少ない時に。マリアナ諸島に行く方法を提案し、様子を見た。

 

何か物騒なモノを持って居る素振りで、中々「うん」とは言わなが二人は一定の距離を置きながら、フランス語でやり取りして居たが、何日掛かるか、しつこく聞いてくる。

 

フランス語は良くわかるので、知らない振りして聞き分けて居たが【テヘランと日程

】とか【USAがグアム】【ウイルスの有効性】とか、見当違いの会話が多かった。

 

キャビンを離したので、どこかに電話でもしたのか、真剣な顔で突っかかってくるのが怖くて、マリアナ諸島は米領なので良いことを企画して居る訳では無く、悪い予感が強くなる。

マカオ沖からバリンタン海峡

以前このクルーザーより小型でエンジン故障でバリンタン海峡の方へ流され、フリッピンの漁船にバタン島まで曳航された経験があるので、マリアナも非公式なら行ける自信はある。

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風光明媚なリゾートグルフ場

フランス語のやり取りでは【サイパン島の水源地】とか【ラオラオベィーゴルフ場】など場違いな会話が多く、どこかのホテルもリザーブして有る様だ。

 

何かゴジョゴジョ言い合った居たが、何時着くと言うので1週間ぐらいかなと、大目に言うと4日にしろと、目を吊り上げているので、【兎に角明るい内は動けないから、釣りでもして居ろ】と備え付けの釣り具を2セット渡す。

 

海底が見える場所に移動して、アンカーを打ち操舵室をロックしキャプテンハウスで仮眠をとる。本来オーナー用のキャビンはアフトにあるが、カンさんは器機の関係でパイロットハウスの隣に作り替えた。