M&SSの再起動ー33(めおと道場の跡継ぎ誕生)
誕生
入院当日から、先生と助産師さんからレクチャーを受け、香織さんにも手伝ってもらいマッサージやら足湯やら、手順通りなぞって合気道の稽古の感じ動いていると、胎児もなんのとなく、反応してくる。
兆しがあるので、先生が回診に来た時そのことを伝えると、助産師も準備に取り掛かり香織さんもそわそわと落ち着かない。
「香織さん、大丈夫ですよ本人が至って元気ですから、ゆったり構えて居て下さいね」と先生が気を使ってくれる。
その日の夕方分娩室に移動いどうした。
まさるも駅から様子を見ようと見舞うと、受付も閉まっていて奥の部屋が賑やかだ。
急ぎ足で来た看護師が
「こんばんは、もしかして柏木さまですか?」と声を掛けてきた。
「はい そうですこんなに遅い時間に申し訳ありません」と頭を下げると
「いえ うちは24時間体制ですから大丈夫です、それより奥様は今分娩室に移動し準備中です、こちらを留守にして申し訳ありません」と謝り
「彩音様のお部屋は誰もいませんが、少しお待ちください」と部屋に案内するように背を向けて歩き出す。
「あの~直ぐ生まれるのでしょうか?」と聞くと「明日の、日の出前位では無いでしょうか」となれた口調で、軽く言う。
「こちらです、香織さまと先生と助産師さんが付き添っていますが、先生が出てくるでしょうからご主人がお見えのことを伝えます」
「そんなことは良いです、わざわざ時間を取らせなくても良いですから」と断ると
「妊婦さんは大変ですが、周りの人も今すぐは何も出来ませんので、励ますだけです少し落ち着いたらご主人も声を掛けて下さい、先生に知らしておきます」と出て行く。
まもなく、香織さんが汗ばんだ顔で戻ってきて
「赤ちゃんを産むのも大変な重労働のようですね(彩音ねぇさんは合気道より力仕事ですね)と先生を笑わして居ました」とポットの白湯を注いで一口飲んで
「あぁ~まさるさんもお茶を出さなくちゃ」と急須を探している。
「僕は良いよ、お客でもないしお邪魔虫だから」と手をふる。
そこへ廊下の方から
「まさる先生! 彩音先生に声を掛けて励まして遣ってください」と須永先生が顔を出した。
「お世話になります、私が顔を出しても役に立ちそうも無いでしょう」と先生に挨拶。
「いやぁ~そう無くはやりここ一番と言うとき、信頼する方が傍にいるだけで、違う力添えになるなるんですよ!」とハッパを掛ける。
「香織ちゃん、案内してくださいね、佐藤さんにも一休みして貰いましょう」と先生が事務所の方に戻っていった。
「まさるさん荷物はここに置いて、行きましょう」と先に行く。
まさるが入ってゆくと
「あらぁ 今日は早いじゃないですか?」と嬉しそうだ、まさるは声を出さずに傍によって手を握る。
香織さんが
「佐藤さん 一休みしてくださいと先生が仰っていました」と伝える。
「それでは少し時間をください」と助産師の佐藤さんが、まさるに会釈して出て行く。
香織さんが彩音さんの顔を覗き
「あらぁ彩音ねぇさん元気が出てきましたね」と冷やかす。
「そうか香織ちゃんにもそう見えたのね、ちょっと気弱に練って居たようね(^^♪」と率直にはなす。
やはりまさるの訪問が功を奏したようだ。
「香織ちゃんには当事者よりも気を使わせ、申し訳ありません」と労う。
「いえ 後学のためにもと母とおばぁちゃんから、勧められたんです彩音ねぇさんは、さり気なく振舞っていますが、実際は凄く慎重に胎教をして備えています」
「あらぁ 香織ちゃん一生懸命盛り上げて呉れた割には、しっかり観察して居たのね、ありがとう香織ちゃんの時は私も時間を造って、ご協力しますからね」と請け合う。
「私は何時のことやら、兎に角相手を見つけるところからはじめなくちゃ」と微笑む。
「香織ちゃんを道場の支配人に専従してしまい、遊ぶ時間が足りなかったかな?」とまさるが関心を示すと
「道場のお仕事も結構面白くて、病みつきになりました、あれはあれで良い経験です」と負担になって居ないようだ。
「そうだよ、俺が居ても役立たずで、足手まといになるだけだよ」と立ち上がる。
「大丈夫です、赤ちゃんの顔を見るまでは頑張りますから、まさるさんは仮眠して下さい」とまさるを気遣う香織ちゃんだ。
先生と佐藤さんが、気が入った顔で参戦態勢
まさるは彩音さんの手を握りながら、汗だくだ。
先生と佐藤助産師・香織さんが無言でテキパキと動き、翌朝3時ごろ男児出産。
「初産でこんなに落ち着いた妊婦さんは、初めてだわ」と助産師の佐藤さんも驚く。
先生が
「秀でている人は、分娩で一声も大きな声を発せず、私も初めてだわ凄い事だわ」と笑顔で彩音さんの左手を握っていた。
香織さんも、手際よく手伝い男の赤ちゃんを産湯を使うところから実感した。夜明け前なのでゆっくりと6時頃自宅に連絡、川渡にも朝食ごろに電話する。
産湯で、鳴き声を聞きながらホットする 彩音さんだ。
落ち着いたので、スーザンや友人たちにLINEで出産を報告
スーザンの苦情
「おめでとう~何でよ~私が立ち会うと言って置いたのに、じゃ~香織ちゃんだけが体験したのね!」と苦情の一言。
「ここ2~3日貴女は、手を離せない仕事だったでしょう~そんな時、休暇届なんか出したら鈴木さんが怒るでしょう」
「あーやんは知っていたのね、榊原さんに重いな仕事を押し付けて申し分け無いことをしたわ」としんみり反省している。
「審議官に宜しく伝えておいてください、ついでに次長にも」と軽くお願いをして置く。
「分かりました、次の連休には必ず伺いますから、ご馳走をお願いします」
「それは大丈夫よ、香織ちゃんとユウリンさんが仕切っているから安心です」
「あぁ そうか榊原さんの奥さんもスタッフに成っちゃたの?羨ましいなぁ~」と自分も加わりたい様だ。
ユウリンたちも見舞いに
川渡で留守番のユウリンが、まさるの祖父に留守番を頼むと、
「電車では面倒だから、私が送ってゆくよ」と立ち上がる。
「だって空き家にしたら、彩音様に叱られます」と固辞する。
「大丈夫ですよ、師範代がいますから頼んでおきます」と車庫に向かう。
ユウリンさんは、高田さんを知っているが、留守番まで頼めるかなぁと思案して居た。
そこへ大学の研修場の斎藤先生が、弓袋に入れた弓を持って練習に来たようだ。
「あらぁ 皆さんお出かけ~でしたか?」と声を掛けてきた。修仁くんが
「彩音先生の赤ちゃんに会いにゆくんです」と嬉しそうに話す。
「えっつ4~5日前は何にもないような振る舞いだったが、お生まれになったの?」と斎藤先生も驚いて居る。
「3日前に病院からお迎えが来て入院しまして、昨日の朝 男のお子さんがお生まれになったようです」とユウリンが話す。
「そうですか、お爺さまは留守番でしょう?」と、思案顔だ。
「お爺さまが送ってくれると言って、高田先生に頼むと言いながら車庫に行きました」とユウリンが話すと
「分かりました、私も行きたいところですが、後にします、高田先生と一緒に留守番します、心配せずに行ってらっしゃい」と言いながら、柔道場の方回った。
修仁くんは助手席に、恵姫は後のドアを開けて乗ろうとしていた。ユウリンは
「いま研修場の斎藤先生がお出でになり、留守番は任せなさいと仰っていました」と報告する。
「そうか 斎藤先生も来たのか、それじゃぁ何の心配もないや」とお爺さんのクラウンが静かに動き出す。
榊原さんも帰る
榊原さんは、横浜からの帰りワゴン車を東京駅に寄せてもらい、その日の昼頃古川に到着、須永産婦人科の病院にゆく。
場所が良く分からないのでタクシーで来たが、5~6分で到着、中へ入ろうとして躊躇っていた。ユウリンたちが見舞い行くことを知っていたので、顔を出したが~
そこへ香織さんが出てきて
「あらっ榊原さんだ、お帰りなさい」とお辞儀をする。
「あっ香織さんだ、良かった」とほっとした顔で、
「ユウリンたちは未だですか?」
「さっき私に電話を呉れましたから、もうすぐ来ますよ」
「まさるさんは市役所に行っていますが、じゃぁ待合室で待って居て下さい、チョット買い物して5分くらいで戻りますから」と歩き出すと
「あっユウリンさんたちが来ましたから、ご一緒してください」と言う。
クラウンが止まり
「あっつパパだぁ」と大きな声で恵姫ちゃんが降りて、修仁くんも続きユウリンもホッとした顔が笑顔に変わる。
祖父がウインドウを開け
「榊原さんお疲れ様です、ちょっと待ってください」と横のスペースに入っていった。