武道場のきずな-13(東京から川渡へ)
流麗なはやぶさで
3時間の東京見物だが、ハイヤー会社の献立が良く渋滞のないコースを無駄なく走り、途中でティータイムもとり、昨日まわりきれなかった部分を効率良く走り昼前に東京駅に到着。
今朝のホテルでの挨拶は、5分位で済みお偉いさんもコーヒーを楽しみ、昨夜の話の続きの様な雰囲気で義理を果たし、ホッとしたひと時だ。
東京駅では、二階堂・マイケルの両警部が、カジュアルファッションでショルダーバックを肩にかけニンマリした顔で待って居た。
リューさんやシンディーのお荷物を、受け取り座席に運ぶ姿は駅のポーターの様に機敏でシンディ―は目を丸くして、その動きを見ていて気づいたようだ。
二人も川渡へ行くんだなーと気付く。
7人のお客も座席に付きにこやかに話し合っていたが、反対側には二人が座り隣の空いた席に背の高い叔父さんが近づき、シンディーに「やぁ~」と声を掛けた。
「だぁ~れ」と顔を覗き込み、「あっつカンさんだぁ~」と大きな声を出した。
「こちらの方も見覚えが有るけど、誰でしたかねぇ?」とシンディーが声を掛ける。
「あれから10年位経ったからねぇ、柏木です」とまさるが会釈し、リューさんにも
「しばらくです、リュー所長」と声を掛ける。
「あっつ そうだったねカシワギマサルさんでしたね」と右手を出して握手する。
「あぁ~そうだった、私は高校生でお爺さんの手伝いで、ボートに乗って居た頃ね」と思い出したようだ。
シンディ―のおかぁさんが
「そうでしたね、あの時東京のお土産を頂き、お礼を言わずに申し訳ありません」と頭を下げる。
「そうかぁ~みんな知り合いで、まるで同窓会だね」とリューさんも喜ぶ。
佐々木次長の指示で、鈴木審議官が相良武術課長に連絡、道場を半日休館にして柏木師範とマイケル助手を特別出張を命じた。
出発進行
この辺は、規律に煩い役所でもファミリー的扱いで、「阿吽の呼吸」で甘くなる。
福岡の天神公園の騒動以来の付き合いで、続いて特命の海外赴任が長く庁内では伝説的な機密扱いで、役所の保存書簡にはわずか数行の記載と言われている。
柏木師範は、人望が厚く「頼まれれば嫌とは言わない人」で命を張るような事案でもさりげなく捌き、後塵を残さない仕事ぶりも信頼される所以でもある!
今回も一緒に乗車してきたが、川渡に住まいを隣合わしているカン・ソンシこと榊原修二さんとは信頼する友人で、家族同様に付き合っている。
わいわい騒ぎながら、初対面の様な自己紹介も有って、はやぶさは盛岡行きで古川の停車時間が短いので早めに用意して動き出す。
その辺はまさるが週一だが、通勤列車なのでさり気なく立ち上がる。
若い警部たちも、ポーター役に徹して、主客の荷物を持ち直して持てないものは、上司のまさるや榊原さんにお願いしていた。
少し寂しい駅ホームだが、改札口に川渡の「Welcome to Macau Hong Kong」と書いたプラカードで出迎えだ、英語の下に(欢迎来到澳门香港)と少し小さい文字で書いてある。
これは、彩音さんとユウリンのアイデアで、所長やシンディ―は大喜びでユウリンとハグして居る。
駅前ロータリーには、中型の観光バスが待って居た、川渡の祖父がバス会社の知り合いに話して、短時間のレンタルを頼んだら
「そんなら僕が運転してゆくから、燃料代だけで良いよ!」と請け合って呉れた様だ。
バスに乗って走り出すと、運転していたバス会社の専務が祖父に事情を聴いていたらしく、昔、観光バスのガイド養成や添乗教育を務めていた経験を話しながら、中国語も交えて卒なくガイドしてくれた。
道の両側に、刈り上がった田んぼを続き遠く奥羽山脈に向かって、修学旅行の様に若やいだ会話が弾む車内だ。
傍に乗っていた祖父も、友人の気配りに感謝しながら目頭を押さえている。
バスは榊原道場の駐車場に入り、お客さんは未だ木の香が漂う新道場に案内された。
道場脇の和風の部屋で、日本茶で接待。
中国生まれのユウリンは、中国古来の宮廷衣装のようなドレスのような軽やかな衣装を着こなし、彩音さんが萌黄のに紋の付いた和服に濃い紫の袴を着けて客の前に姿を見せた。華やかな雰囲気だが所作は楚々として、淑やかだ。
榊原さんが挨拶し、柏木家の支援で隣に姉妹館のような道場を開くことが出来たことを説明
「台湾・上海・深圳・香港・マカオと放浪の旅の終着が、この川渡でした」と閉める。
まさるも、歓迎の挨拶をして
「役所の仕事で、最初の仕事が香港やマカオ・海南島など、海上捜査を榊原さん、当時はカン・ソンシさんでしたが手解きを得、私の人生も先輩と同じになりました」
姫になったユウリン
来客が、寛いできた時分にフローリングの道場に照明が付き、和室の障子を両方に開きピカピカの道場が現れる。優雅な琴の音が静かに流れ、二人の美女が先ほどの衣装のまま互いに舞う様な姿で、合気道と太極拳の技を繰り出しさり気なく交わして行きかう
傍らにはシュウレンとハウメイの兄妹が、太極拳のユニフォームで控えていた。
ユウリンは、裾の長いチャイナドレスのようないで立ちで,彩音さんは軽快な和服に袴で、屋根のかかった地面の道場とフローリングの道場を行ったり来たりで大忙しだが、
本人は演武の延長の様に優雅に舞う様な所作で、2人の若武者(シュウレンとハウメイ)は攻撃姿勢で脇役に徹して居る。
4人の動きに、榊原さんさんが巧みなソポットライト操作で盛り上げ、まさるは音響担当で、予め編集したCDをセットし温和なBGM]でホローする。
木の香が新鮮な道場のフローリングで、一番目立ったのが洋風のドレスに似た、羽衣?が舞うように古武道の演武で楽しませてくれたユウリンだった。まさるの叔父さんでもある棟梁が、めおと道場と同じ仕様で照明と音響をセットして呉れたので一層効果的で、お披露目に花を添える。
夕焼けの露天風呂
西の空が夕焼けになるころ、めおと道場に移りご自慢の露天風呂を楽しむ。最近追加工事で、高温の硫黄泉を真水の貯水タンクを3重のパイプを通らして、硫黄泉と並べた匂いのない露天風呂も好評だ。
今日は、一般のお稽古を臨時休館にしてシンディ―たちお客さんだけなので、男女の仕切り無しなので、ハウメイとシンディーも一緒にキャーキャー言いながら楽しんでいる
ディナーはまさるの祖父が古川から出前を頼むと、寿司屋の主人が
「いつも世話になっているから出前ではなく出張するよ」と主人と板長の二人が、ワンボックスにセットを積んで、午後から「めおと道場」のキッチンで、下ごしらえをしている。
元々会社の保養所だった建物なので、キッチンや食堂、寝室は小さなホテル並みに揃っている。
昔からの友人なので、柔道場の開場や行事には何回か出張で参加して呉れ、ほとんど指示なしで勝手にやって呉れるので重宝して居る。
今回は斎藤こずえ弓道3段にも声をかけた。
大学院の本部に戻り農学部の教授に栄進、弓道の稽古も覚束無い状態で、彩音さんのLINEの誘いに欣喜雀躍の体で前泊で来た。
朝から弓を引いたり道場の掃除を手伝ったり、以前研究所に居た頃の様に楽しそう。
柔道の高田師範代も週3回の道場通いだが、お客なら朝から行きますと休みのこの日、子供たちが居ない道場で掃除したり片付けをしている。
(古川、川渡、仙台の関係者)
榊原夫妻・長男ー修仁・シュウレン)長女ー恵姫・ハウメイ)
柏木まさる夫妻・祖父夫妻
古川の正一さん夫妻・豊・香織兄妹、斎藤先生・高田師範代
おまけのようなお役人二人:二階堂三郎警部・名護マイケル警部
(香港・マカオからのお客)
元マカオ入出管長ーリユー夫妻
コンサル会社代表ーリィー・シンディー
シンディ―の母親
シンディ―の叔父夫妻
この他、裏方の寿司屋の主従で、宴は賑やかに始まる。