まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

M&SSの再起動ー32(密入国の事案もウヤムヤ)

彩音さん先手入院

翌日は、まさるの出勤日で榊原(カン)さんも一緒に朝の新幹線で上京する。子供たちは警察庁に一緒に行けないので、ユウリンママとお留守番。

 

古川の須永先生が診療開始前に迎えに来行くと連絡が入り、前から用意してあるバック二つを香織さんにお願いして、少し早いが入院することにした。

 

留守番は祖父と、ユウリンさんと子供たちにお願いして、玄関に行くと既にワゴン車がバックで寄せてきた。

 

古川はまさるの父親の実家で、祖父の家だが川渡にいる方が多く、家族でその近くが須永先生の医院だ。香織さんと二人で須永先生の運転する中型のワゴンで移動。

 

須永先生は、ディータイムの診療中じゃ動けないので、診療開始前のフリータイムに迎えに来たようで、道場の事情に精通している先生ならではの、気配りだ。

 

 川渡の祖父が連絡したようで、古川の祖母の光江さんと正一さんの奥さんの花江さんが、婦人科の前で待機していた。歩いて4~5分の距離で、顔なじみの町内だ。

 

「あ~ら柏木さんがお出迎えだわ」と須永先生も喜びながら、ドアを開けてくれた。

「先生が、わざわざお迎えに行って頂くなんて申し訳ありません」と祖母が礼を言う。

 

「私は暇人ですから、彩音先生が動ける間に来て頂く方が、皆さんが安心だからね」とサッサっと医院のドアを開け、みんなを誘導する。

総合病院の部長を務めた先生とは思えない、軽快な動きだ。

 

彩音さんは、お輿入れの新婦の様に片手を香織さんに預け、しずしず進む。

光江ばちゃんと花江さんも車の荷物を持って、後に続く。

 

早めの患者さんが待合室から顔をだして

「あ~らお嫁さんのお出ましだわあ~」と明るく歓迎してくれる。

ご本人は、ひょいひょいと歩けそうだが,今日は淑やかに歩をすすめる。

 

彩音さんは、まさるは忙しいだろうと一応LINEでトークすることにして、一段落して「産院に到着をした」ことをトークした。

 

昼前にトークが来た。可動式のベットに凭れるようにして香織さんたち話をしていると

「今朝は何にも気付かなけど、大丈夫ですか?」とまさるだ。

 

スマホの会話に切り替え、朝からの経緯を伝える。

「大丈夫です。古川の皆さんと香織さんが付き添っって来て頂いたので、ご心配なく明日の夕方まで、気にしないでお仕事に集中してください」と伝える。

 

「須永先生に気を遣わせたようだね」とまさるが恐縮して居る。

「くれぐれもスーザンには、後で伝えて下さい、あの人は、特休を取って飛んできそうですから」と話すと

「今日は榊原さんも巻き込んで、地下室で(秘密の尋問)の陣頭指揮を執っているから、手抜きは出来ないだろう」と笑っている。

 地下二階でルール無視の尋問

その頃桜田門近くの地味なビルの地下2階で、緊迫したやりとりが繰り広げられていた。

 

9時過ぎに、3人をバラバラの個室で小さなテーブルと椅子をいれ、2対1の睨み合いの格闘技の様な取り調べが続いていた。

 

運転して居たのが、中国系の正規の外交官らしいが、不法入国の手引きをし榊原さんの殺害計画を組み立てた張本人らしく、個人用のカバンからアラビア語で書いたプランが見つかった。

 

大使館の書記官と名乗ったショー・アディム・チンホーが虚勢を張っても少しも驚かず、取り調べる担当者が承知して居るので

「外交特権は通用しない、今の事態を深刻に考えろ!」とテーブルがひっくり返るほどの勢いの二階堂警部だ。

 

殺し屋と言う触れ込みの「A」に対して、榊原さんが補助で付き添い、この部屋は斎藤警部補と、書記に早坂巡査長が付いて進行。

 

榊原さんが「俺の顔を忘れたのか?」とマスクを外して、顔を前に突き出した。

 

「俺を殺しに来たらしいな、俺の写真を持っているんだろ!」と向かいの椅子にドカッと座り、睨みつけた。

 

深圳のやくざで、事件を犯したとき裏社会のチュウさんたら情報を貰って、義父のカン社長殺害で追跡して居たが

「あいつはチンピラだが、殺しを請け負って商売にしている様だ」と横顔を見たことがあった。

 

その時は面通しが無いので、何となく気になって居た顔だ。榊原さんを見て顔を引きつらせて、下を向いたので斎藤警部補に目で合図し警部補も頷き

 

「何でお前が外交官なんだよ!」と腕を伸ばして顎を上げる、苦しそうに藻掻くが、空手4段の右手は頑丈に出来ている。

 

書記の早坂くんは、勤務が終わってから語学教室に通って2年になるので、今日は良い試験台が出来て楽しみにしていた。

 

早坂くんがアラビア語・フランス語が出来るので問題ないなと、榊原さんが無言で腕組みをしている。

「お前何も言わんのか、どうしたんだカング・タオ」と警部補が英語で質問する。

 

ビクッとして顔を背けたが、榊原さんの鋭い目で睨まれ落ち着きがない。

「俺を殺せと、誰に命令されたんだ!」と中国語で榊原さんが怒鳴った。

 

「カング・タオ どこの国で外交ビザを貰ったんだ」と早坂くんが静かにアラビア語で話しかける。

こっちもただの書記じゃなく、腕っぷしも強そうだ。

早坂くんは、証拠品「入国ビザ」をヒラヒラさせながら挑発する。

 

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入国時のビザのサンプル

 本庁の12階の会議室で、緊張した面持ちのメンバーが重い議題に、発言が少なく鈴木審議官も全体を見回して

 

「善意のサポーターが狙われ、事前に察知したからGood resultなら我々司法機関はいらなくなるよね!偶々 入国時の事案が、業務に忠実な民間人のメモから足が付いた訳で、此のことは奇跡に近い事です、今 薄暗い地下室で、当事者でもある榊原氏が、それこそ善意で尋問を手伝っています。彼は正義感の強い人で、若し入国が気づかずに居たら、川渡の柏木まさる警視の道場近くで、建設中の武道場を嗅ぎつかれ危ない事になったかも知れない。神田さんや二階堂さん・名護さんの戦友とも言える人が救われたことは喜ばしいですが、この結末はここに集まった我々に託されました」

 

「前回のウイルス騒ぎの科学者は、生まれ変わらして国外追放でしたが、今回は曲がりなりにも外交官です、押収した車両は神奈川県警で盗難車扱いで、廃車処理になりそうです」

 

「皆さんが後始末に時間をかけた結果、残留物もなく気掛かりだった車体番号を追跡したらしいです。所有者が破産して行方知れずで、偽装ナンバーをそのままだったので富士山ナンバーと堺ナンバーなどで盗難車扱いで終了します」

 

「従って、某国の総領事が関わっていることは判明せず、幕が下りています。もう一つの懸念は某国の職員が3名行方知れずの件ですが、捜索依頼も総領事が探索に乗り出した気配もなく、拘束した3名の処置はM&SSに一任したいと考えて居ます。処置の予算等はバックアップしますので、滞りなく処理してください」

 

神田警視が

「外務省等には開示しなくてよいですか?」

「あぁ~杉原分析官には私の方で、経過を口頭で話しておきます」と鈴木審議官。

 

「後始末は、民間人の協力を仰いでも問題ないですね?」

「それなりに信頼のおける企業なり、組織を運用することはお任せします」

 

「今回のこの会議の議事録等は、保存しませんので皆さんのメモ等は、終息時に抹消してください、進行中に判断に迷った場合は私か神田さん名護さんに直接、問い合わせて処置してください」とサービスエリアの事案は、お蔵入りで終息する。

 

殆どがM&SSのメンバーだったが、早速別館の事務所に帰還 地下の尋問班も参加して、今後のスケジュールを確認する。当然榊原氏も参加し、一番重い仕事を請け負うことになりそうだ。

 

 

その夕方、大型のワンボックスが横浜のベイサイドの反対に駐車、向かい側のビル街を撮影する様でスタンバイ。撮影スポットに、撮影用の8kの大型カメラや撮影用の架台をセットして居た。

 

直ぐ脇の桟橋に中型の黒っぽいクルーザーが接岸し、海釣りにでも行くのか若い連中が竿やクーラーボックスを積み込んでいる、撮影クール―の下した荷物も、2つ3つ積み込み静かに離岸してゆく。

 

撮影クルーも、30分くらいで撮影終了し撤収し後にはチリ一つも見当たらず、闇が深くなってゆく。

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横浜の夜景はマカオにも似て煌びやかな夜が更けてゆく(^^♪