まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

武道場のきずな-33 (遠隔操作ー7)

東進から北進に転換  

香港海域から抜け本格的な外洋航海に入り、クルーザーは舵を北に切る。
シンディ―二世号の操舵室は初めて向かう外洋を、レーダーの画面と海図を広げてコンパスを使いながら、前方を見つめている。大陸側にも気を配るが、タイペーの警戒網を突破するのも半端じゃない神経戦だ。マカオ近海の夜間航海は慣れているが、初めての北上は二人で操舵とナビゲートを交互に替わりながら進む。やはり機関士乗船の条件は、法律的にも正しく現実的だ。佐藤領事官チームが、高雄に移ったので琉球島の周辺の方がアクセスし易い。ただ大陸側の沿岸に近い方が深度が浅いので、操船し易いが監視の目も多く、東沙に近いと外洋の荒さが半端じゃない、大波で煽られると事故を避けられない。

弥・賢樹の真剣勝負

キャビンの主客も寝て居なかった?浩治さんはボートが蒲台郡島を抜けて直進して居ることを確認、バックからモニターや手作りのモバイルPCなど3台並べて操作して居る。小さなモニターだけで箱型のケースを省いて、通常の3分の1位の容積だ。衛星ブロードバンドを使って居るので、それなりのアンテナ機能をセットし回線なしで通信操作が出来る。この部屋は宇宙船と交信するような緊迫感で、タブレットの画面を転換してモニターカメラの動画を確認、受信状態は手元のタブレットに複製して居る。宇宙空間2000キロ上空で複数の弾頭が分離大気圏めがけて落下中だ。隣の一人部屋に宮春が寝ているが、これは教えられない秘事であろ。二人で対応すれば速く出来るだろうが~、今日まで何年もかけて構築したプランだ。モニターには田舎の工場跡地の様な3個の画面が映って、他にデジタル時計のカウンター数字が進むのもある。モニターの画面は動画で、工場の片隅に小さな明かりが点滅して居る。どれにも光がある。弥・賢樹さんこと三枝浩治は満足そうに頷き腕時計を見る。

敵か味方か黒船現る

リャン船長のバースに、出動メンバーが集まり最後のミーティングを開いて居ると、水路の入り口から船が入って来た。頑丈そうな船が前触れも無く出動した様だ。
佐藤さんも困惑気味に埠頭に向って歩き出し、直ぐ後ろを木村君が付き着岸を待つ。

警備船は、地味な色だが装備はしっかりしてシートカバーで覆われた機銃座もありそうだ。船長らしき人物ががデッキに立ち、手を振りながら何かを喋っている。
木村君が分かったらしく通訳し「私たちは、第三者として皆様の安全を守ります、私たちを気にせずお仕事を続けて下さい」と訳す。

佐藤領事官は戸惑いながらは「有難うございます、今無線で話して琉球島周辺で接舷します、若干密な部分があるので見張って置いて下さい」と言うと
「分かりました、距離を置いて随行します」と結構律義な話だ。

沿岸警備はどっちも微妙だ

「あれっつ船影が~」とナビを担当するニール機関士が、レーダー画面を見て大声を出す。シンディーも驚いたが交替で見張っていたケィ伍長もびっくりする。
シンディー船長は「並走している様ね、臨船が有りそうね」と操舵輪に手を置き、落ち着いている。
「少尉を呼んできます」と伍長が急ぐ。その時無線のスピーカーに反応が出た。「こちら海上警備の巡視艇36248号です、貴船の左300mを並走して居ます。マカオ海警局長から照会がありましたマカオ124965号ですか、応答願います」明瞭な広東語だ。
「はいマカオ12465号リィーマリンサービスの所有船です」とシンディ―がヤン局長が手配してくれたようで、安心して応答できた。

マップで見るとお隣さんだが船で行動すには時間が掛る

沿岸にホワイトエンジェル出現

「失礼ですが、リィー・シンディー船長でしたか、自船は東沙諸島付近から同行して居ます、もう一件確認事項が有ります、貴船に国家総合部隊の拓少尉が乗船して居る情報があるのですが、差し障りが無ければマイクにお願いします、私は海警の郭・俊船長です」「はい分かりました、お呼びします」と後ろを見ると、拓少尉が笑いながらマイクを受け取る。

「おはよう郭船長、暫くぶりだね」とゾンザイな口振りで話し始める「何で北の守備隊の将校さんが、南の海に遊んでいるのですか?」「いやぁ遊んでいる訳ではなく、これもターリェンの部隊の仕事だよ、色々あってね、こんな海の上で郭さんのお声を聴くとは懐かしいねぇ」と茶化す。
「シンディ―さんとデートを邪魔する気は有りませんが、怖いヤン局長の顔が目に浮かんでね、気を付けて航行してください。シンディーさんに替わって下さい」という。「有難うね、先に郭さんに連絡すれば面倒無かったんだなぁ、お世話になりました」「私は何もして居ませんよ、日報にはパトロール中に「大きな漂流木材」が在ったことを書いて置きます」

「シンディーに替わりました、郭船長は拓少尉のご友人だったのですね、奇遇な巡り合わせに驚いています、今後ともよろしくお願いします」と礼を言う。「マカオ124965号は今日中に帰航するのでしょう、このチャンネルでご連絡ください、夜が明けそうですから問題ないでしょうが、問題が起きないようにチェックしたいので、帰りは高雄から真っすぐアモイに向って寄って領海線を越えて沿海を航行して下さい、寄りすぎると岩礁が多いですから気を付けて下さいよ、随行します。私は18時まで勤務です」「大変なご配慮で助かります、拓少尉も大喜びです、それでは少し仕事をして来ます」と切る。

気持が通じる暖かい人物が想像できる。香港を出てからすぐマークされていた様だが、沿岸から離れると深度があるので、大陸側を蛇行して領海線を侵して来た様だ。
巡視艇が、ずっと見守って来てくれた有難う 郭船長感謝感謝のシンディ―船長だ(^^♪

リャン号出航

高雄チームも警備艇を艫につけて、リャン号が静かにバースを離れる。警備本部のレーダーに反応して居るようで、シキリに呼び掛けてくる。さっきの約束でリャン艇は無線が故障で修理中にして、警備艇から返事して貰うことにした。まだスマホが有効なので、警備艇と打ち合わせは出来ている
「リィーマリンのクルーザーは、巡視艇を仲間に入れて運行して居るようで、大きな壁が無くなったような気がするが、海上は何が起こるか分からないが」と佐藤さんがスマホを操作して居る。

海峡の幅は120~130㎞なので、レーダーと海図は手放せない、リャンさんの助手は、従妹の高雄海上大学学生で専門的なことは詳しいが、免状が無いので助手だ。「夜が明けそうだがコンタクトする迄頑張ろう」とハッパを掛け「向こうは凄いな、巡視艇を供連れで帰りも約束したようだ、女性船長は女傑だな」と感心して居る。「佐藤さん、シンディ―さんは女傑ではなくモデルさんですよ、日本語も話せるし英語もハングルも大丈夫と聞いています」とリャンさんは敬意を示す。
「そうか女傑じゃ失礼か、レディーだな」と笑う。

多すぎる資金

その話題の女傑が、船室に降りてベットルームをノックする。
「起きて居ますか?」と言うと鈴由がドアを開け「おはようございます」と頭を下げる。シンディーが布袋をベットルームの小さなテーブルにのせる。
「もうすぐお別れになります、これは多すぎたので半分で済みそうなのでお返しします、劉華とも相談し、お二人は今後も経費が掛かかるので、お持ち下さい」と袋を少し開ける。
隣の部屋から顔を出した浩治さんが驚いて「いやぁ、経費はもっと掛かって居るでしょう」という。「これは多すぎたのでお返しするので、お二人にはこれからマダマダ大変な事が待ち構えています、私たちは申し訳ないですが、人並に生活が出来ています。劉華も道場を引き継ぎ、二人で半分でも多すぎると言って居ました、決して邪魔にはなりません、お持ちください」と二人の顔をみる。親娘は困惑した顔を、見合せている。