まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

武道場のきずなー31(遠隔操作ー5)

31-5

最終目的地

少し待っていると、黄色のパーカーの女性が歩いて来たが、後ろにスーツケースを押した軍の制服の若い人、その後ろに身長のある田舎の娘がショルダーを肩に掛け荷物は無い、続いて背の高い中年の男性もショルダーを肩に、さらに後ろにも軍人がスーツケースを押して付いてくる。駐車場のワンボックスは地味な色の無名だが、運転席にカン社長が座っている。後ろにも地味なセダンが居るが、顔を出さない。劉華らしい女性は、4人をバスに乗せると後ろの車に素早く乗る。

追尾車両の確認

先に出たワンボックスは、おなじ街をぐるっと回って、ショッピングセンターの駐車場に入る。そこにはセダンが先行し、カン縫製会社の20人乗り位の中型バスも停まっていた。カン社長が一人だけ降り、バスの運転席で周辺を観察して居る。ワンボックスのドアが開き、間隔を空けて一人づつバスに乗り込む。セダンの運転席はシンディーで、夜間双眼鏡で見張っている。バスは静かに動き出しセダンは相変わらず監視体制だ。バスはさっきと同じような走りで、町内を回るように走る。シンディーのセダンは追いつき同じスピードで付いて行く。バスは開いているカン縫製の門にすーっと入る。続いてセダンも入り、門を閉める。

シンディーが、状況をLINEでトーク「寮で食事をして出発する」ことを連絡。カン縫製の脇に深圳湾に繋がる運河水路あり、会社の敷地の岸壁にシンディーのクルーザーが停泊していた。その近くに、接岸しないパトロール船が赤色灯を回転させ停止して居るが、誰も気付かない様だ。

祖国のおもてなし

社員寮の談話室に食卓をセット、中国なのに寿司の重箱が何段にも積まれ、キッチンから和風の汁物の香りが漂う。カン社長の知り合いの寿司屋から特製の寿司と和食を出前して貰って居た。到着時間も把握して居るので深夜の出前晩餐になった。弥親娘が日系と言う情報で、サービス満点の労いだ。

宮春が嬉しそうに「お寿司がこんな風に頂けるなんて、生れて初めてです」と感激して居る。父親の浩治さんも「こんなご馳走を頂けとは思って居ませんでした、有難うございます」と丁寧に頭を下げる。

二人の兵隊さんも、眼を白黒しながら「お寿司がこんなに美味しいなんて知りませんでした」と嬉しそうだ。食事の途中だが、ここに居るのは同じ目的の仲間と言う事で、拓少尉が立ち上がり日本語でスケジュール変更を、発表した。皆が明瞭な日本語に驚いた。

スケジュール変更

「当初の計画は、カン縫製のバスで「社員旅行風にマカオに渡る」予定でしたが、集団の移動はギコチなく目立つので、不審者の目を交わすため、変更しました。都合よくリィ―さんのクルーザーがこちらに接岸して居ることを聞き、中隊長に打診して海警に出動を要請した。湾内航行の許可と警備伴走し、深圳諸島を出るまで伴走することにした。もちろん詳細は、開示して居ません。マカオ迄車両運搬は事前予約が必要なようで、<無理をすればバスを急遽持ち込めます>が、変に勘繰られても面白くないので、作戦の変更をします。

組織が違いますが、我々のトップ、シン中隊長はは人望が高く、部署や組織が違っても臨機応変に対応しています。いかがですか?カン社長とリィー社長のご意見を先に聞くべきでしたが、一部手配済で、パトロール船はスタンバイして岸壁近くで待機中です、少し速いテンポで動いて居ます」と頭を下げる。

シンディーがカン社長に合図し「凄いです、大きな組織なのに、いとも簡単に作戦変更のお手並みに驚きました、さっきから窓の外の赤色回転灯を認識しておりますが、作戦失敗かと観念したところでした、念のためボートで来て良かったーどうでしょう 今は「弥・賢樹」さんですが、少しストーリーが替わりますが、不都合は有りませんか?」

「どうにも こうにも、私たちは(まな板に乗った状態)なので、全てお任せいたします、そうでしょう 今は鈴由さんに名が替りましたが?」と娘に問いかける。
「見づ知らずのわたし達に、こんなにお気を使っていただき申し訳ありません、こんなに幸せ感を感じるのは、生れて初めてかもしれません、お任せいたします」ときれいな中国娘、鈴由が日本語で丁寧に礼を言う。

「それでは、リィー社長さん、先方と打合せしてください、私たちは本当はクルーザー乗船を確認して任務終了ですが、随伴船が同行するのでしばらく様子を見ることにします」

受け側の作戦本部

高雄の岸壁近くの、”リャン海上サービス„の会議室で待機中の佐藤班は驚いた、本国の特殊部隊の中隊直属が、同伴エスコートして居るらしい「出航後にLINEか衛星携帯で状況のキャッチボールを頻繁にをする事になります,早速杉原チーフに投げかけ対応を決めます、皆さんと情報を共有します」と佐藤さんも変更案に戸惑う。リャンさんは「ヤバいですね外交問題になりそう~」と頭を抱える。交流協会の二人は、突然大波を被ったように目をぱちぱちしてして居たが発言はしない。

弥親娘は再三の変装

深圳のカン縫製の2階は、シャッターを下ろしカーテンを引いて気配を消して、無人を装いながら弥親娘は田舎の服装を脱ぎ、スポーティーな服装に着替える。ここではスーツケースを持ち主に返し、整理して貴重品とPCや証拠書類、画像のメモリーなど必要最低限に絞る。それを見てカン社長が、寮の管理人に何かを云いつけ、新しい小形の旅行鞄を2個持ってすぐ戻る。「荷物が少くなったようですがPCも入りますからお使いください」菅社長が弥さんに渡す。

弥さんは「アッツ」と言いながら「気付きませんでした、拓尉や伍長に運んで貰って身軽でしたが、有難うございます」と嬉しそうに二人の兵隊とカン社長に頭を下げ、鈴由にも渡す。

劉華も同行?

劉華も行きたそうで、シンディーとカン社長と話す、海上の乗り移りは厳しいし今後の展開が分からないので、諦めるように言われる。劉華とカン縫製は元々町内のように近いので顔見知りだが、今回のように濃密に話をしたことは無かった。前から劉華も隣国の司直からマークのあるから、暫く身を隠す話はして居た。シンディーが「劉華もカン縫製に入職して、ほとぼりを冷ましたら」と提案する。
それを聞いたカン社長が「一向に構わないよ、ここで寝食を取ってください、道場のおばぁちゃんに私が話して置きます」と乗り気だ。「それじゃぁお願いして、暫く外に出ないでお針子の手伝いをしなさい」とシンディーが決める。みんなもホッとして顔になる。

出発

拓少尉が皆の顔を見渡し、立ち上がりケイ伍長を促し窓際に寄る。外を確認して廊下に出て素早く階段を降りる。続いてシンディーが鈴由に手を貸し弥さんも続く。シンディーは小走りにボートに乗りエンジンを掛けた。ライトは点けず舷側の乗降用の小さなドアを開け、キャビンの入り口も静かに開ける。その時エンジンルーム脇から、黒ずくめの男性が現れ会釈する、リィーマリーンサービスのニール副社長だ。4人の乗客は一人づつ間隔を置いて、背を屈めるように乗船する。拓少尉が船側に立ち、小さなライトで丸を書くように回す。向こうからも2~3秒遅れてライトの点滅が有った。

シンディーⅡ世号

リィーサービスのクルーザーが、軽くフォーンを鳴らし岸壁を離れる。会社の建物の蔭で、見送りの人たちが手を振っているのが、かすかに感じる。パトロール船も4~50m離れて動き始める。運河の周りは何の動きも無く、静かだ。

その時、暗闇の中から強い光があたる。驚いてシンディーはレバーを戻し、ニュートラルに入れ、スローになって後進に入れて、又ニュートラル入れる。ほぼ同じ位置に浮かんでいる。後ろのについて居たパトロール船は、慌てて右に切りこっちのボートを避け、少し先で停止する。

強力ライトを点けた船が、近づきながら赤色灯も点灯する!