まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

武道場のきずなー29(遠隔操作ー3)

(シンディーの移住作戦ー10)

丹東出発

浩治さんは、早速LINEで台北の佐藤さんに「列車に乗った」とトークする。
球春も、劉華に同じようにトーク「ノートに無い数字です」と書いて「2hr+4hr+8hr.です」と送信する。昨日までのトークで、丹東・瀋陽・北京西の乗り換えと特急列車を手配できたことをトークした。列車の乗車時間は14時間だが、近づいたらリアルタイムでLINEトークでするので上手く行くだろうと楽観的だ。通常の通信回路は、新幹線ではエラーになるが宇宙から來る電波は別物で、明確に伝わる。

添乗の士官は、二人のお客がスマホで通信するのが不思議だが、まだ聞く訳にはいかない。少佐から出すぎたことは慎めと言われ「このお二人は部隊の恩人なのだから」とキツク言われて勤務に就いた。

二人の付き添いは、左腕に「特警」の腕章を巻いて帽子は被らず、座席を2席向かい合わせに回転し通路側に座る。スーツケースには軍用のラベルが貼り付け、コンコースの「荷物検査」もスルー出来て、浩治さんが危惧した所持品のチェックを免れた。シン少佐の気配りは並々ならぬ手際で、浩治さんも思わず目を抑える。

列車には、いつもシン少佐のお使いをして居る、名前も知らぬ紳士が今日も乗って来て、拓少尉に話しをしたが向かい側の浩治さんにも聞こえない声だった。仮にAさんにして置こう。丹東を出て直ぐ拓少尉がメモを呉れた。(お一人づつトイレに行き、着替えてパスポートやビザと公用のスマホも一緒にこのバックに入れて下さい。新しいパスポートは身に着けて置いて下さい、私たちも同行します)とトートバックを出した。

そうだった私用のスマホは役所に届けず、以前中東に出張の時、大使館にコンタクトを取った時、佐藤領事官がから連絡用の宮春用にと2台のスマホを供与され、帰国しても誰にも悟られていない。

公用のスマホGPSで行動範囲をチェックされているが、製のWifiの電波が弱い場合衛星通信にアクセス可能なスマホで、もちろんノーチェックで所在は把握されない。浩治さんは宮春が6年生の頃、母親の佳代さんに先立たれた時、必ず母国に帰る決心をした。それまで国の方針に逆らわず従順な、研究者を装いながら家族を守ってきたが、それも叶わず宮春に寂しい思いをさせているので、チャンスを待っていた。

ミサイルやロケットの製造を促進して居る体制側が、浩治さんの人柄を信頼し機密の高い施策を打ち明け、外国の製品にも予算も追加してきた。浩治さん同僚も他国から強制移住で仕事をして居るが、中には体制に反抗して始末された話を見聞するので、作戦を打ち明け情報の共有を提案した。

やはり宮春も、自分の生い立ちが普通じゃないことに訝しく思って居た。それ以来、親娘は心身鍛錬をテーマに体制側の要請も快く、相手方の心証を害しないようぬ振舞う。浩治さんが学生時代に習得した空手と柔道を、徹底的に伝授機会が有れば隣国の古武道も習得した。母親に似て体形が良く、容姿はモデルさんみたいな娘が、武道に造詣が深いとは思えない。

慣れない変装

トイレは直ぐ傍で、先に浩治さんとスーツケースをひいて拓少尉が動く。洗面所とトイレが連続して広い。田舎の叔父さん風の上下に、草臥れたコートを羽織りメークは拓少尉も手伝って、顔色と髪も別人になり古ぼけたった。素早く座席に戻り、シートを倒し体を横たえる。すかさず拓少尉がコートを顔までかけてOKサイン。ケイ伍長も宮春を促しスーツケースを引き出し先に進む。

宮春も田舎の娘のように、髪を少し乱し顔色は浅黒くメークを直し、スーツのスラックスをもんぺの様な木綿に変えて、大きなジャンパー風のコート着ている。見事に変身して佐藤領事官が送って来た、パスポートを参考にした。高校時代の古武道の稽古帰りに、付き添う監視役が撮った素顔のおねぇちゃんみたいな写真を、父親の浩治さんが中東で佐藤領事官に渡し、「弥・賢樹と鈴由」のパスポートの再生使われた。しばらくはこの格好が宮春の仮装になる。

密偵さんも変装

さっきの密偵風の紳士Aさんが、再び現れ拓少尉がまとめたトートバックをさりげなく持ち上げ、薄目を開いている浩治さんと目が合いお互いに頷きスッツと身をひるがえす。いつも作業服で田舎の現場に居る様だが、今日は上下のスーツにネクタイを結んで、1等車の乗客に似合う服装にお洒落して居る。

家を出る時来ていた服装はすべてトートバックに入れたので、少し軽くなった様だが相変わらず二人の士官がごく自然に引いて前を行く。さっきの叔父Aさんも近くを歩いているが、ホームの反対側に移動し折り返しの列車に乗る様だ。今度ははっきり挨拶風に頭を下げ、拓少尉が軽く手を上げている。

1昔の首都(奉天瀋陽の夕焼け

北京行きも始発だったので、1等車の端の方に座席を取ったようで、目立たないように横になろうとシートを倒したが、シート間が広く何処にいても目立つ。1等車は運賃が高く普通車と違って余裕があり、軍の将校が同伴で一目置かれ、ほとんどチケットや荷物の検査も無かった。ここでもLINEで現況を送る。13時前で21時前後には着きそうだ。

深圳の拠点もスタンバイ

マカオのシンディーは昨日のLINEで準備し、今朝はカン縫製会社の寮に泊まり、カン社長や劉華と打ち合わせ今後何かの弾みで発覚した場合の段取りを考えた。劉華が何度かターリィンに行ってるのでマークされる可能性と、カン縫製も考える必要がありそうだ、などとキリがない話が続く。

台北の佐藤さんは、シンディーとコンタクトが出来、深圳の動きが掴め大分楽になったと杉原さんに連絡を入れた。
中央の杉原さんも、大使館間の垣根がとれコントロールし易くなった、察庁の次長にイレギュラーな事案だが何かの為に、裏情報として一方を入れた。

新幹線は天津南に到着し、連絡高速で北京南に移動深圳・香港行きは北京西から出るので、ここはタクシーで移動する。この辺は、ケイ伍長が天津近くの出身なので、スーツケースを押しながら左の腕章を見せびらかす様に、タクシーや乗降口のチェックを交わしてゆく。親娘はその後ろを田舎者風に付き、最後を拓少尉がさりげなくガードする。

もう一組の不審者

そのころ、瀋陽の先で車が崖下に転落炎上した様だ。谷が深くて救助作業も確認も難攻して居た。中年の男女が瀋陽駅周辺で乗用車を買い、山の方に逃走したようだ。一報はこんな知らせだったが、今朝、丹東河岸から護送された、隣国の上層部の技師親娘らしい。護送の軍幹部が、事前にパスポートとビザやスマホを預かり保管して居たので、判明した。丁度昼なので食堂でランチを取っている間に、食堂の裏口から逃走した。

付近に停車して居たセダンを高額で買い取り、スピードを上げて走り去ったが、護送部隊は即追跡開始し追いついて停車を命じたが停まらないので、後輪を射撃、車は走行不能で道路脇の柵を倒して川に転落、途中の岩石にあたり出火炎上した。谷は深く5~60mもあるので、装備を確保して捜索開始は本日夕刻になりそう。

シン少佐は、本部に連絡関連性が高いので、捜索に協力するので帰隊が遅れることを伝え、浩治さんのサブのスマホに連絡する。お使い役の彼が仕組み、麗親娘の服装をそのまま使用して後始末をするようだ。現地で写真に記録し「遺体は傷んで居るので火葬処理しました」と報告した。

何事もなく、香港行きの新幹線が北京西から発車。丁度ホームでシン少佐から拓少尉にメールが着信<麗・浩治さんと麗・宮春さんは、行方不明で処理完了。以降「弥・賢樹さんと弥・鈴由さんの頑張りに期待します」と表示、拓さんが画面を見せてくれた。

さっきのトートバックは重大な事案を削除して呉れたのだろうか?