まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

武道場のきずなー30(遠隔操作ー4)

人知れず密かに動く

台北に飛んだ佐藤領事官は、高雄に移動し領事館代わりの交流協会へ顔を出す。地元に顔の利く庶務の木村君を連れ出し「民間で、融通の利く海上運送のスぺシャリトを紹介して下さい」と頼んだ。「官民両方から信頼されているボート屋さんを知って居ますが」と惚けたことを言う。
「なんですか?そんな奴は信用できないのじゃないですか?」と質すと「大丈夫です、内の仕事を任すことが有りますが、香港や沖縄の武富島・宮古島あたりまで、物でも手紙でも届てくれますよ」と言う。「それじゃ宅配やより早いか?人はどうです?」とカマを掛ける。「それはダメですよ、密入国の手伝いになるでしょう」と、真面目に応える。

「分かったよ、会わしてくれ」「じゃぁこれから行きますか、事務所の車ですが看板の無いヤツの方が良いようですね」と、若いが話が分かる職員だ。日本台湾交流協会に挨拶し、一言貰って居る<日報に書けない事案でも暗黙の了解です>何処の出先機関も同じように<郷に入れば郷に従え>の雰囲気だ。佐藤領事官も語学が堪能で、最初中南米の小国に赴任したが、小国の利便性と融通性を活かし、職務を円滑に処理しないと、たちまち本国に通報され査問会に付されることもある。

無印のグレーのワンボックスが、車庫から出て来た。運転手は地元の若い人だが、日本語がペラペラで日本の大学を出、現地で採用された見習い職員の鄭さんだ。「リャンさんの処に行ってください」と丁寧に頼む。「裏から海沿いの駐車場に入れます」と、職務を十分認識している様だ。さすがに裏通りの片側は海で道路は狭いが大きな倉庫が続いて居る。先ほど、木村君が連絡を入れたので、事務所の裏口が駐車場で印象の良い若い人が待っていた。外部に身を晒すことなく、こじんまりした会議室に通され、運転手役の鄭さんも同席し、この事案のスタッフ全員が揃ったようだ。

何となく緊張したメンバーが揃う

まず、佐藤さんがテヘランから来たことを伝え<丸S親娘を深圳から運ぶ事案>だと伝える。みんなは「アッツ」と声を出して顔を見合わせている。
佐藤さんは、手順を説明「深圳からフェリーでマカオに入り、マカオの裏側の漁村でクルーザーに乗り換え、深夜、高雄の反対側の蘭嶼郷付近に漂着するストーリだが、素人が考えた芝居だから皆さんの知恵を貸して下さい」と区切る。

主役的な立場のリャンさんが「蘭嶼郷付近は岩礁が多く慣れないボートは、危険です東沙付近は海警局の巡視艇のパトロールも多いし、最近は軍艦も巡回しているらしいから~」と不安顔だ。佐藤さんが「クルーザーは20トン前後で、船長はリィー・シンディーさんと言う外洋をクルージングする会社をやって居る人です。事前にマカオの海警局に話しの半分位を申告、本国の「特警」にも話が通って了解を得たようです。最悪 臨検を受けた場合、ヤン・ワンズ治安警察局長に連絡する約束らしいです。ただこの件は台湾の関係者には通せず非公式なので、リャンさんに一働きして欲しいのです」と頭を下げる。

             リャンさんのMyボート

「な~んだ外堀は埋められて、設計図は出来ているんじゃないですか、シンディ―ちゃんに逢えるなら喜んでお請けします、ヤン局長が出てこない内に早めに終わりましょうね」とリャンさんがやる気十分だ。木村君は「皆さんを、ご存じなんですか?」「はいこのお二人は業界でも裏社会でも有名人ですよ、スタイルが良く頭が良く美人で、カンフーはプロ級で誰も手を出さない女侠客です、ヤン局長の武道は分らないですが、睨まれたら業界から消されっちまうし、シンディちゃんを妹のように可愛がっている様です」「凄い人たちが揃ったようですね」と、佐藤さんが一安心の顔だ、続けて

「ただこの親娘も只ものじゃなく、大陸の本国も一目置いて居るらしいです、特殊部隊のエスコートが付いて国内の警備は万全のようです、こっちも徹底的にネタが漏れない態勢で対応して下さい、それなりに高額になるかも知れませんが、安心してください」とにっこり」笑う佐藤さんだ。

「私も何回かお世話になった局長は、本国にも顔が利くので下手なことは出来ませんが、お会いするときは高級なワインを忘れないように(^^♪」とリャンさんも結構危ない橋を渡りながら商売を遣って居る様だ。

只ものではない弥・賢樹親娘の逃走は、名も知らないAさんが大金で乗用車を買い取り、逃げ出したのは誰も見ていないが、Aさんが穏便に車を買い近くにいた若い女性を促して乗せ、ゆっくり走りだした様だ。しばらくして近くに待機して居た護送部隊の車両が、サイレンを鳴らして乗用車の行った方向に追跡のした様だ。

夕方になって、宮春のLINEで「順調に深圳に近づいています、護衛さんがマカオ迄送るというので、4人で深圳の駅を降ります」とあった。
誰が来るのだろう、みんなが心配したが「宮春が気を許している人だから大丈夫でしょう」と、いつも心配性の劉華が言い切った。

浩治さんの作戦も動いている

浩治さんがスーツケースから、パソコンを出してイヤーフォンを耳に入れ何かを確認し、表示された画面を見ながら頷き、ニンマリ笑顔になる。「パパ何んでにやけているの」と怒ったように質す。「何でもないよ、順調に進んで居るから安心したんだよ」と言う。

改名の裏付け(麗から弥に)

シン少佐は、瀋陽の事故現場に電話し進捗を確認「夜間は、危険だから明るいうちに撤収して明朝改めてかかること」と伝える。人的被害は無かったことを承知している様だ。Aさんたちの車が銃弾でバーストし、乗って居た二人は車を停めて降り、車内に十分ガソリンをまいて、後ろに回って押し出す様に「車を崖に落とす」処を追跡部隊が視認して居た。川岸の岩石に衝突発火炎上も、確認Aさんと女性は部隊の車両に収容帰途につく。その間道路の閉鎖で、走行する車は皆無、最も通行止めで留まっている車も皆無、のどかな田舎の風景に谷間から黒煙が上がっているだけ。

深圳到着待ち

到着30分前に「LINEで深圳北口の車両待機場に到着」「降車口に、黄色のフード付きのパーカーで呉‣劉華が待機中です、確認したら後ろについて下さい」と送る。「OK]の返信。