まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

武道場のきずなー28(遠隔操作ー2)

(シンディーの移住計画)

鴨緑江を渡る

麗・浩治親娘は公用車で、鴨緑江横断橋を渡り河口警備所前で車を降り、待機して居たシン少佐の指揮する中型輸送車寄ってくる。K運転手は隣国の将校が敬礼して、浩治さん父娘に挨拶し将校が自ら車のドアを開けて、輸送車に案内する。部下も士官で、素早く二人の荷物を受け取り車の後ろに積み込む。付き添う車両の兵隊4名は、二人を守るように銃口を下に向けて周りを監視する。橋梁警備の兵隊は、声も出せず緊張したまま固まって居る。

Sとの付き合い

14~5年前から付き合って居るから、浩治さんとは会話を交わさなくても、気持ち通じ最近は丹東に駐在し、主に対岸の民族を監視する部隊だ。地方配属部隊の悲哀と言うか、首都方面より格差があり浩治さんたちの暮らしは国の幹部の処遇だ。贅沢品は若干多いので、時々たばこや菓子類・食品なども融通し部下から喜ばれそんな仲だ。

そもそもSことシン少佐はとの付き合いは、シンが若い士官時代に部隊の不祥事に巻き込まれ悶々して居た。偶々浩治さんが仕事で天津に行ったとき、警備に付いて居た軍のチーフが浩治さんの後ろで、何気ない一言を言った。浩治さんが気になったが誰も気づかず、監視役の国から一緒の警護役も距離が有ったので聞こえていない。

皆から離れたテーブルでその警護の隊長と食事中に、浩治さんが日本語で質した。彼も少し驚いた顔だが、意識して発した言葉なので素直に実情を明かした。自分の直属が、その上の上官を救う手立てが(金)だったらしい。上官が移動すれば、当時の若手の士官にも影響があるので、浩治さんに話し工面救済のサインだった。浩治さんが、拉致被害者の情報が持っていた様だ。

浩治さんの即決

シンさんの部隊で横領事件が発生、直接関与した訳でないが自分の配下が横領し、有り金を返還し即刻処刑された、大尉から降格か左遷で北のチベットの国境警備などの過酷な辺地に飛ばされそうだ。恩恵で損害金を充当出来れば、内部処理で処分は皆無になる、当事者は直後に処分されて居るjから拉致外だ。将校でも損害金をカバーするほど蓄えは無理だ。

浩治さんは、初対面のシンさんは日系なのか日本語を理解し、自分を頼りに軍の不祥事を話したことに驚きながら信頼感が生まれた。浩治さんの立場は設計・製造の立場だが外国に出ると、全ての業務を捌き外国では書類より現金がパワーを持つので、常にバックの中はドルの束が占めている。

自分の立場も囚われの身で、即決心自由になる多額の「ドル」をシンに融通、急場を凌いで、相互に信頼を得る機会があった。(日本語で500有ればなぁだった)

以後、外国へ出る場合は必ず隣国を経由するので、事前にコンタクトを取り交流し信頼度を増して来た。

Sは2階級特進

Sさんは上層部からも信頼を増し、2階級特進で特殊部隊の将校で、かなり自由が利く立場になった。継続して浩治さんとは縁を切らず、職務に反する部分も自分が動けなくとも忠実な部下を駆使しても全うする。浩治さんと共通する部分があり、体制に疑問を持つ身かも知れない。

浩治さんの住まいは、首都より北なので2時間半から3時間も有れば対岸に渡れるが。いつもは効用なので、列車で丹東駅経由で移動する、今日も公用だが列車より早い乗用車にした。

何時も、浩治さんに監視の役で付いて居るKくんを運転手として指名した。少し重いバックに最小限の貴重品と変わった替え着を詰め込んで、ショルダーバックを肩に掛けた。宮春は少しお洒落な洋服を着て、やはりスーツケースに詰め込んだ着替えは今回初めて着るものだ。

監視のKは不満

運転手のKくんが、案の定「一晩泊まりでこんなに持って行くのですか?」とこぼす。「ご招待だから正装するんだよ」と惚けた。
「いつものように列車 使えば、車は要らないでしょ」と不満そうだ。
「列車はいつもノロノロの25キロだろう、車は100は無理だが80キロくらいは出るだろう」と声には出さないが、<これが最後だよっ>と言いたかった。

Kは不満そうな顔で、エンジンを掛ける。「私も付いて行きましょうか?」と言う、「ご招待側の要望で、ホテルの部屋数や待機場所が無いので、今回は二人に限定の招待だったのだ、お土産は買ってくるからご免」と断る。

昨日は遅くまで、片付けで大変な思いをして、寝不足だ。着るものは殆ど残したが、他人に見せられない資料などを、二人で季節でもないのにストーブに火を入れ、焼き尽くした。機密な資料は出来る限り選択して焼いたりバッグ入れたり、写真類は少ないが持って行く事にした。

Kの不満そうな顔に手を上げ、丹東の街を特殊任務の車列は赤色回転灯を点けて猛スピードで走る。特に急ぐ必要も無いのだが、Sさんは車の助手席に座りホッとした顔になり、笑顔を後席に向け滑らかな日本語で話しかける。

「丹東駅から瀋陽(昔の奉天)迄1時間30分位、瀋陽から北京まで昔は11時間位掛かりましたが、現在は2時間位に短縮されました。北京西から深圳まで8時間くらいの列車のチケットを用意しました。いずれも一等席で食事付きでリラックス出来ます、チケットは身分証明書が必要ですが、私の軍籍の証明で購入しましたから、ここにコピーを一緒にお持ちください」と丁寧に一枚づつ提示して、封筒に入れて渡してくれた。旅行会社のエージェントみたいに手際が良い。

「お嬢様は初めてお会いしますが、お会いできて光栄です、お父様には昔からお世話に成っておりまして、今回は匿名のお仕事のようで、お気を付けて下さい」と右手を出して握手をした。「シンさんには、大分無理させたんじゃないか?」と浩治さんも握手した。

士官がエスコート

「大丈夫です、私が付き添って深圳迄同行できれば安心ですが、代わりに小尉と伍長を付けますので、ポーターに使って下さい」と運転手のケイ伍長をと指差し、後ろのジープ型のリーダーの拓少尉を指差した。

「この事案は部隊の上官公認です、軍務の一部として取り扱いますので、何かあったら拓少尉に任せて下さい、彼らは日本語が話せますから、信用してください」とそれ以上詳しくは話さなかった。

今回も丹東には近い大連に居たようで迅速に対応して呉れた。丹東では駅前に着けずに少し離れた目立たない位置に3台の軍用車両が停まり、素早く降車ケイ伍長は後ろからスーツケースを降ろし、拓少尉に一個渡す。シン少佐は車から降りずに、浩治さんに別の封筒を渡し浩治さんも少し厚みのある封筒を渡していた。宮春は知らん顔で降りて、両手を上げて背伸びして居る。

浩治さんも降りて、シン少佐に軽く手を上げ後ろの車両にも挨拶の様な仕草をする。
拓少尉は、ケイ伍長とスーツケースを自分の物のように、慣れた手つきで押してゆく親娘はショルダーを肩に、ゆっくり進む。チケットを出すだけで通過、少し先に制服の二人の軍人が待っている。拓少尉が浩治さんの脇に、ケイ伍長が宮春の脇に付きガード体制だ。4人は脇目も振らず真っすぐ1等車の乗車口に向かう、