武道場のきずなー22(シンディーの移住作戦ー3)
新たな展開
麗・宮春(レイ・キュウシュン)は若いのに結構重要な部門を任されているのは、大学の電子工学部をトップで卒業、父親の所属する航空管理部門に配属。4年の経験で、ロケットを周回衛星に格上げする計画に関わっていた。
最もこの事業は国際的にも、周辺国のやじ馬にも機密のプランだ。
当初は、中東の親交国に製造依頼した部分が地上テストで破損、急遽中国へ発注したが~・・・
何回かターリエン(大連)の工場と打ち合わせ、国のトップ介在して制作を承諾したが進捗が鈍い。
ターリエンの工場は、自国の宇宙計画が優先で麗宮春たちのオーダーは後回しなっている様だ、同行しているスタッフが
<我が国の担当が若い女性のには、荷が重そうと陰口が聞こえるのも承知していた>
40代の政府関係者R氏も気にして、ミーティングを開き促進の検討会を開いた。
卓球とかサッカーで工場にアピールする案が出たが、麗は口出ししない。
女性警備員のKちゃんが<麗さんは武道を嗜んでいるから、古武道のデモンストレーションなんかいいじゃない>と提案する。男性スタッフは<武道かぁ~>と自信がなさそうだ。麗も特別興味なそうなそ振りだった<いやぁ試合じゃなくて、練習のような感じでも良いんじゃない>とKちゃんが言う。
武道の試練
麗も発言<武道には「技」の「形」と言う基本形を体現も有ります、「拳で付いて寸止め」で相手が気絶するくらいの迫力になります>と気負いでもなく涼やかに提案する。
参加スタッフは、日頃無駄口や冗談を言わない麗が、本音で話すことに関心を示し<麗さんはどの程度できますか?>とR氏が聞いて来た。
<それでは、実技で確認してみますか?此処にいる全員が一度に掛かって来て下さい>と立ち上がる。10メートル四方位の会議室に、テーブルと椅子が10脚あるので、格闘技は出来そうに無い。
<分かりました、少しスペースを作ります>と椅子とテーブルを移動し4メートル四方位の場所が出来た。そこに麗を囲むように5人が立つと、手を延ばせば掴める距離だ。
<はい丁度良いくらいですね>とにっこり笑う。
<この距離で殴り合ったらボコボコになりますよ>と心配気味なR 氏だ。
麗の裏技
<はいどうぞ>と言った瞬間 麗の姿が目の前から消えた。そして各自の下腿に衝撃が走り、全員がひっくり返り、麗は涼しい顔でハンカチを出して両手を拭いて居る。
誰も手を出せず、麗の体にも触る事も無く苦しそうに脚を摩っている。
R氏が、片付けたテーブルにしがみついて立ち上がり<ここに来たメンバーは護身術程度の武術を体験しているのですが、どうしたんでしょう?>とつぶやく。
<今晩は少し痛むかもしれませんが、明日には回復しますからご安心を~>皆に手を出して立たせる。
全員が納得、翌日の連絡会議で<工場長に、武道場をお借り出来ますか?>たずねる。
<道場か、夕方は稽古しているようだから、空いているなら一緒でも良いかな?>
<いやぁ場所をお借りし、私たちの体を解すだけですから、皆さんの邪魔にならない時間帯にお願いします>と下手に出る。
<そうか体調保持も大事だからな、空いて居る場合は何時でも良いよ>と許可された。
今回の出張は時間が掛かりそうなので、スポーツウエアや道着を持参して居たので、早速夕方ロッカールームで着替えて武道場に入る。
工場長の指示があったようで、麗さん以下5名が道場に顔を出すと、道場の周りに4~50人の社員が興味津々で座席に座っている。
社員の武道部員は、各々の形で古武道の稽古にはいっていた。
本場の技を披露
麗は、父から柔道と空手を教わっているので、柔道着で最初は「受け身」から入る。
「後ろ受け身」で背中が着地する瞬間に両手を思いっきり叩く。中国武道場はフローリングに薄いシートが貼って居たが道場内に大きな音が反響する。
一瞬他の稽古が停まり、全員が注目する。細身の若い女性が表情も変えず次の「前受身」に移り、真正面に倒れ両手を開いて受けるが今度は前腕部を「ハ」の字に着地する。
ほとんど音がしない。
続けて「前回り受け身」や「横受身」など一通りやって、女性警備員Kちゃんと「乱取り」を10分くらいやる。
色白の麗も顔色が赤くなり、汗ばんできた。
次に男性スタッフの空手経験者と相対して、基本技の方をやる。どうしても声を出すので周りが気にするので、次に一人で「形」をやる。
大分汗を掻いたので、タオルを使って居ると工場の上級社員が「麗さんでしたよね」と声を掛けて来た。
我是 麗・宮春謝謝你們的幫助ー麗・宮春ですお世話になって居ますと中国語で応える。
「八極拳もおやりと聞きましたが、ご披露できませんか?」「えっつどうしてご存じなのですか?」と麗が驚く。
「実は内緒の情報ですが、可なり上級のレベルだと噂に成っとりました」と頭を下げる。「そうですか?それでは仕方ありませんね、少しお待ちくださいウエアを替えます」と女性警備員のKちゃんと一緒にロッカールームに戻る。
急いで着替える。道場では、カンフーも稽古していたが、深圳で呉先生に学んでから続けて来た「八極拳」長めの胴衣にジャージ風のスパッチを付けて再登場。警備のKちゃんもカンフー風の胴衣を着ける。
遠くから見ても、すらっとした体形にドレス風の胴衣が似合う。「おーっつ」と言うドヨメキガあがり、二人で舞う様な動作から、格闘技に移行Kちゃんが飛び蹴りを仕掛けるが、麗は優雅に正面から側面に移動し着地したKちゃんを後ろから抱きしめるように抱えていた。
ゆっくりした動作に見えるが、長い道着で舞うことが相手が戸惑うようだ。中国本来の古武道だが、麗は完全にマスターし突きや手刀なども組み込んで居た。密着した攻撃技も、徒手の速さが見えず工場の上級者も戸惑い気味で
<誰か対戦したいものはいるかな?>と後から来た工場長が声を掛けたが誰も声を出さない。「主任、誰か指名してはみないか?」「工場長!レベルが違いますね!」と引き気味だ。
すると麗が「八極拳は未だ初心者なのでどうぞ教えてください」と頭を下げる。
工場の主任が「初心者と仰いましたが、かなり年期が入って居るように見えますが~」と控えめだ。「私は、空手と柔道も並行で習って居ましたが、カンフーは大学に進んで深圳の呉先生に習いました」「なぁ~るほど河北省の「呉鍾」系の本家ですね、あの叔母さまは、優雅に舞いながら相手を倒すと言う方ですね、強いわけだ」と感心する。
「まぁ少し、時間を割いて貰って教わりなさい」と工場長がコメントして引き上げた。その後、工場の社員でカンフーの心得がある何人かが麗さんの前に来て<レベルが違う様ですから、ゆっくりした動作でご教授をお願いします>と丁寧に頭を下げる。麗は技を丁寧に演武しすると5名の部員が真似ているが、流れが悪い。
次は一対一で動作をチェック、技の途中で止めて耐力を試す。手足を伸ばした状態で留まっているのが辛く解けてしまう。麗が見本を示し、同じ姿勢で動作を留め「私の体を押してください、遠慮しないでどうぞ>と言うので、30台の若い社員が近寄って、片手で押したが、ビクともしない。特別気張っているわけでも無さそうで、しなやかに立っている。
<皆さんも、毎日お稽古の前後に基礎体力を付くように、技とは違う動き、手足だけでなく全身を柔らかく動かして、柔軟性を付けて下さい?と締める。稽古後にシャワーを借りていると、工場長の夕飯に招待があり、6人のメンバーと一緒に特別料理をご馳走になる。当然製造中の話に及び促進の約束を約した。ラッキーな一日だった。