まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

武道場のきずなー23(シンディーの移住作戦ー4)

 呉・劉華のお友達

深圳の八極拳の師範代 呉・劉華さんが、隣国の友だちが政府高官に出世し、国の機密計画に携わり試験中の大型ロケットが故障、隣国のターリエン(大連)に喫緊で部品を発注し、何回か工場を訪ねているらしい。
今回は、是非劉華さんに会ってお話したいとLINEで着信した。

近代都市大連(ターリエン)は欧米の風景だ!

その女性は麗・宮春(レイ・キュウシュン)と言い、20代の美人で八極拳は劉華に引けを取らないくらい上達し、空手と柔道は自宅で父親に習い格闘技はプロ級らしい。

深圳大学に短期留学中、大学の要請で八極拳の研修を「呉武道場」を指名され、劉華より年が下だが気が合い友達付き合いで、稽古した。遅くなると泊ることも有ったが、必ず付き添いも一緒で特別な学生だった。
本人はそんなことは気にせず、女性の警備員が常に同行する。八極拳に執着して早朝から暗くなるまで、一貫して突きや飛びの技をやる。稽古が終わると淑やかな日本人の様な静かな女性になる。

劉華とは姉妹のように寛いでいるが、家族や自分の身分については詳しく話さない。何か事情があるんだろうと、気にせず稽古だけの付き合いだが、連絡などはLINEで充分だ。そのことは、親しいシンディーにもLINEでトークし「友達は大事にしてね」と返信したこともあった。

今回も、LINEで大体の仕事は終わりそうなので、是非会いたいが監視が厳しくて動けないので、来て欲しいと言う。会いたいと言うのは、事情があるのだろうと大連は少し遠いが前に逢ったホテルより高級ホテルを指定してきた。こんな密かな行動はかって無かったが、劉華も用心して変装を考え男性の洋服と野球帽のを被り、目は悪くないが眼鏡をかけハーフ的な感じだ。国内旅行だからパスポートは提示しないが、身分証明書は持参する。

麗も「帰国前に少し買い物したい」と個人行動を申告、チームリーダーのRもすっかり信用しているのようで、明るいうちに戻るようにと注意する。
模範演技の披露が利いているのか、日頃楚々とした官僚の美形が、大胆な技を秘めていることに、同行チームの信頼を得たようだ。
それで工場側にも好感を持たれ、発注品の製造ピッチが上がって、最後の追い込みに辿り着いたと言う。あと一回の訪中で、ターリエンの政府の出先機関で決済をする予定だ。部品の完成で、父親の仕事も目途が付くので現在は中東に出張中だ。

麗・浩治は別行動

そのころ麗の父(麗・浩治)は、中東の中心的な国の最高機関に挨拶し、高級ホテルに一泊して寛ぐ。次に工場のある地方都市の電子機器や宇宙船の構造体を発注した工場を訪問、苦情を言いたいが我慢しながら、通訳を入れて「今後も宜しく」と協力を頼む。

中東だが欧米系の一流ホテルに投宿できた、田舎だが工場が多く中心街にホテルが集中して居た。麗は、同行した監視員にドル札を何枚か渡し「ぶらぶらと観光したいので」と同行を断る。三ヶ月分くらいの現金を貰い、にんまりと同意する。

麗・浩治はホテルの室内に戻り、用意してきたメイクや洋服を取り換え、全く違う古老の観光客に変装し、エレベーターに素早く乗り込み一階に。
カウンターの向かい側のカフェコーナーに進み、何気なく周りを眺めながらカメラの位置を確認、窓際に席をとる。供を連れず単独行動するのは、国内では無理だが、外国でも初めての体験でコーヒーを注文した。

窓から外の景色を眺めながら、ゆったりした行動で小さなザックから観光パンフレットを取り出して、観光に集中している風に見せる。隣の席に人が来たようだが気にせず、ページをめくりながら、ザックからペンを取り出し、観光プランを思考している様だ。

スリリングな出会い

隣に座ったのは東洋人のカップルらしく、周りの客を気にせず日本語で愉快そうに笑いながら話して居る。麗・浩治は懐しく聞きながら、メモを書こうとし腕を動かすとパンフレットが通路に滑り落ちた。

歴史ある中東のパーサイアン・コーザ・ホテルは宮殿の様だ

パンフレットを拾うと相手を見る、カップルの男性が足元に落ちたパンフを前傾姿勢で、拾い上げて「どうぞ」と言いながら、手渡す。「センキュー」と礼を言いながら、パンフレットを両手で受け取る。知らない人が見れば、微笑ましい場面だが二人の間には物凄い緊張感があったが、ぎこちない笑顔だ。

受け取ったパンフレットを開くでもなく、麗・浩治は軽く目を瞑ったが、薄目を開けて相手の男性に小さくサインしている。カップルの男性も軽く頷いたようだが、気付かない風にコーヒーをふくむ。
麗・浩治は平常心を取り戻し冷えたコーヒーを飲み干し、パンフレットを丁寧にザックの中央部分に入れて、紐で締める。ザックを肩に回しながら、カップルに会釈しながらカウンターに向かう。

玄関ホールでボーイに何事か話しかけアプローチに立つ、ボーイの合図で空車が近付く。玄関からさっきのカップルが、急ぎ足で近づいてくる。麗は気付かない風で運転手にパンフレットを示し、行き先を言ったようだ。運転手も頷き、前を向いて車が動き出す。カップルも、車を呼んだらしくアラビア語で行き先を指示、相手の女性にカメラを出す様に言って居る

崖の裏の秘密

特別な名所も無いような景色だが、少し走っただけで岩だらけの山の麓のような殺風景な崖が壁のように突き立った。その右側の広場にタクシーや観光バスが並んで駐車している。二人連れの東洋人もそこでタクシーを降り、徒歩で斜めの幅の細い道を進む。みんなが自分たちを見ていると思ったが、そうでは無いようで後ろを振り返ると驚いた。

さっきの壁の様な岩の裏側に連なる山々が、子供がクレヨンで色付けした様な山肌が延々と連なっていた。先に着いた麗も感嘆した顔で、小さなカメラで写真を撮っていた。
二人はさり気なく歩を進め、小声で話しかける。

          七色のマーフネシャーン丘陵は絶景だった!

中東の地に地球誕生時の痕跡を堪能し見晴らし台を降りると、窓が目張りした高級なワンボックス車が近づいて来た。さっきのカップルが、先導するようにワンボックスのスライドドアを開き、麗氏を先に乗せ二入りも続く。

「私たちはテヘランから来たチームで、私は佐藤俊二 彼女は小林かおると言います。さらに運転手は、東京生まれのトニーで助手席の旦那はチームリダーの近藤京太郎さんです。
「私は現在、麗・浩治と名乗って居ますが、昔は三枝浩治(サエグサ・コウジ)でした」と名乗った。