M&SSの再起動ー8(九龍からマカオに)
一日目が終わりそう
警察庁は「ウイルス培養と医師の行方不明」の事案で、捜査中に判明した内容を途中経過として、関係のある省庁に文書で通知した。
外務省へは、杉原情報分析官が香港へ同行しているので、ウイルスの培養の外国人医師のメールで懸念される外国名を伝えた。(サイパンとワシントンの水道水源地の文言の意味が)
香港に飛んだ形跡があり、調査中の事も杉原氏から経過報告とダブるかもしれないが丁寧に伝え、海外経験の少ないスタッフの面倒を見て貰っている礼を言う。
外務省はすでに非公式で在日大使館に伝えたようで、東南アジアの基地や居住地区にシグナルを送ったような気配だ。
現地の神田・二階堂のチームは、香港島から九龍島に入ったが香港島とはまるで違う国に来た感じで、夜は此処には泊まれないので戻ろうとしたが、時間が勿体ないので明日の調査予定に近い街に移動した。
青衣のランブラー・オアシス
地元のハウ氏ご推薦の、青衣島のランブラーオアシスに投宿、コンテナターミナルの目の前だが、九龍の中国らしい雰囲気より気持ちが良いホテルだ。
神田警視がホテルに入って早速マカオチームにメールし、経過を報告した。
折り返し杉原氏から香港からマカオに移動で、パスポートのチェックが有ったが深く考えずに来てしまったので、明朝、香港国際空港の港珠澳大橋香港口岸(イミグレーション施設)と言う日本なら税関の施設に行って、バスに乗る場合のスキャンファイルを閲覧できるか交渉してください。
総領事館の山田さんとハウさんならご存知かもしれないが、今回、我々4人は国の代表なので無理でも押し気味対応して良いでしょう。
パスポートのチェックは必ず(スキャン⇒ファイル⇒保存)の流れですから、日別にフォルダーになって居るはずですから粘って下さい。
私たちも心強いレスキューを採用したので、明日の朝いちばんでマカオの人工島に戻って港珠澳大橋マカオ(澳門)口岸へ行き、スキャンファイルを見せて貰います。
成田で見つけたイワン・マリュー成る人物も、香港国際空港にチェックインして足跡を残した訳だから、香港島や九龍には行かなかったのかもしれない。
いづれにしても、明日の捜査がキーになりそうだ。
神田警視は次に鈴木審議官と名護警視に、経過と明日の捜査予定をメールして一日目の夕食に付く。
総領事館の山田・ハウ両氏とも香港島に戻る気で居たようだが、チームは夜のミーティングも大事だと頼み、費用は本庁持ちでお願いする。
杉原・名護チームは。マカオ競馬場近くのマカオ・ルーズベルトに宿をとった。
夕食も日本会の会長 佐竹さんとグーさんの知り合いで、リー・シンディーの5人で、ステーキなども出されたが中華料理だった。
女神の起業術
リーさんは、民間の人材派遣会社を経営しマカオだけでなく、隣の珠海市や香港にもお得意先があり、日に何度も港珠澳大橋を渡って商売している様だ。
グーさんの叔父さんががリーさんのお爺さんで、お爺さん家族は日本で暮らして居て、中國が少し穏やかになったので、リーさんのお父さんと一緒に珠海に戻り、日系の会社で仕事をしていた様だ。
リーさんの家は、中国語より日本語が普通で、それはおかぁさんが日本人で大学時代にリーさんのお父さんと知り合い日本で結婚した。
リーさんは中国に渡ってから生まれたので、日本の事は分らなかったが、おかぁさんが時々日本に行くので必ずついて行き、日本の良い所がいっぱいあるので好きだ。
日本には何度も行くが、一度もホテルに泊まったことが無く、親戚や叔父さんやおかぁさんの知り合いも多く、いつも家族同様に長期滞在が出来る。
お父さんも中国語より日本語が上手で、お爺さんが勤めていた関係で同じ会社に就職し、車を運転したり工場の手伝いをしたり、事務所で中国語で話すのが苦手と言って居た。
頑張り屋さんだったが体を壊し、病気で40代で亡くなった。
人望の祖父のお陰
お爺さんが定年になって、その頃中国語と日本語も話すお爺さんが、仕事の無い人を前の会社や知り合いの会社などに紹介したのがきっかけで、人材派遣を始めた。
お爺さんは人望が厚く、労使から信頼され順調に伸び、マカオでも香港でも頼りになる派遣屋さんで名が通っていた。
そのお爺さんも5年前に亡くなり、今までの繋がりで声を掛けてくる会社や知り合いが多く、孫にあたるリーさんが引き継いだ形で続けている。
「叔父さんが亡くなって5年か、シンディ―も大人になったなぁ」と眼を細めてみる。
高校・大学と祖父に付いて歩いていたので、顔みしりが多く居たのが良かったのか、祖父が亡くなっても普通に仕事が出来ている。
この間までフェリーで1時間以上も掛かったのが、今は30分位で料金も半分の900円くらいで便利になって助かって居ます。
体型もすらりとして、色白の美人で温和に見えるので、不良っぽいのが声を掛けるがギリギリ我慢して、人目が少なくなった所で
”日本語と広東語が混じった啖呵を切り„
空手の構えをとると、相手が顔色を変えて後ずさり退散したことが有った。
「これは小さい時見た、女性のやくざ映画を真似たんでしょうね」と笑う。
「良いですか」とマイケルが
「グーさんの後ろから歩いて来た時、ここのスタッフさんかモデルさんだと思ったのですが、お話を聞くと私たちと比べ物にならない経験ですね」と頭を掻いている。
裏社会もお客さん
それ以来一目置かれ、半端なチンピラは遠ざかる。
時々裏の社会から依頼が来るが、しっかり義理を果たす組織には、誠意を持って対応し危ないと感じたら、不審な部分を指摘し断ることもある。
断っても、次の機会がない訳でなく、相手が詫びてくる場合は斡旋し関係を断たない。
聞いていた、杉原さんが思わず声を出して
「我々よりはるかに大人の世界で、お仕事を為さっているんですねぇ」と感心する。
祖父から太極拳を教わり、父が元気なころに空手を教えられ、学生時代はクラブに席を置いて代表選手で出場していた。
今でも時間があればマンションのフロアで、汗を流しているので体が締まっている。
当時からPCに保存されている顧客名簿は、大事な財産で重宝している。
几帳面に申告するので役所からも信頼され、逆に仕事を依頼されることもある様だ。
「私もお爺さまには何度かお会いした事があり、温厚な人柄で誠実な方でしたね」と佐竹さんが眼差しを遠くして思い出している様だ。
「そうでしたね、人材派遣を遣るようになってから、入会しイベントには一緒に来たことが有りました」
リーさんが、帰るとき
「さっきの「イワン・マリュー」のパスポートのコピーがありましたらお借り出来ますか?、X氏の時のもお借りします」とフォルダーに挟み込み、
「裏社会にも誠実な人間も居ますから、移動するには空より海の方が多い感じがするので、香港をいつ離れたか分かれば絞り易い気がします」とコメントして佐竹さんを誘い
「ご自宅までお送りします」と約束して立ち上がる。
杉原氏は完全に先手を取られ
「明日は、ここから人工島に行く予定ですが、ご都合はどうですか?」と聞くと
「私の車ワンボックスで10人位乗れますから、ご一緒します、今晩帰って知り合いにアプローチして感触をお伝えします」と軽く会釈して帰る。