ブラウン一家の紅葉狩り-14(本邦随一と言われる栗駒山の紅葉)
ディナーは山海の珍味競合い
夕食は一階の二方向にスクリーンの様な窓が、季節の折々を楽しめる仕組みだ!
イワナの塩焼きは絶品だったが、同じ膳に鯛とマグロの刺身がついて居る。
ここは山の上だが日本海も太平洋からも、新鮮な魚介類が手に入るので、お食事は街中と同じに楽しめる。
部屋に案内して呉れたかおるさんが、和服に着替えエプロンを付け給仕をしていた
「お口に合いますか~?」と心配そうな顔で聞いて来た。
「こんなに美味しいものを、山のてっ辺で食べられるとは幸せですよ」とブラウンさん
「ほんと、イワナの焼き物も美味しかったが、お刺身も美味しいですよ」と啓子さんも褒める。
「それは良かったです、来週は山仕舞いなので板前さんが張り切って居ましたが、ブラウンさんは日本食は苦手じゃ無いんですね」と優しく聞いている。
啓子さんがニッコリして
「私は料理下手なので、よそで食事するときは日本食オンリーです。家に帰るとあそこの料理はこの味と違うとか、もっと柔らかい感じだとか、結構厳しいですよ」
「それは日本食がお好きなんですね?」とかおるさんが安心した顔だ。
「かおるさんは、オーナーのお嬢さんだと聞いたのですが、フロアディレクターとしても永いのですか?」ブラウンさんがかおるさんに質問。
「高校時代は山岳部に席をおいて、休日は真黒く日焼けしてホテルは食事の時だけ立ち寄る感じでしたが、大学はお金が掛かるので、従業員の皆さんに扱かれて2年目です」とほほ笑む。
「2年ですか、素質が有るんだなぁ」とブラウンさんが感心。
「明日は、どんなスケジュールですか?バスは11時半ごろですが|と心配そう聞く。
「そうだ、まさるさんにLINEする約束だった、かおるさんは何時ごろからお付き合い出来ますか?」
「朝食が終わったら、特別予定は在りません。ブラウンさんたちのご案内だけですから、まさるさんってどなたですか?あっ立ち入ってしまいました、御免んさい」と頭をさげる。
「そうだね、帰りの足の件を話して居ませんでしたね、宮城県の川渡で柔道などを教えている、ご夫妻の家にお世話なっておりご主人が柏木まさるさんで彩音さんが奥さんです」
「えっ川渡のめおと道場のお知り合いですか?」とかおるさんが驚く。
めおと道場を体験して居たかおるさん
「そうですが、めおと道場をご存知でしたか?」とブラウンさんも驚く。
「私は、宮城県大崎市岩出山の生まれです、今も住んで居ますが夏の間はここが住まいみたいになります。川渡の隣でめおと道場が完成した時は見学に行き、道場に入れて貰いましたよ」と眼を輝かして話す。
「そうでしたか、明日の帰りを毛利さんが心配して呉れましたが、サロンでミーティング中にスマホで、栗駒山荘にチェックインしたことを話すと、それはラッキーと言いながら【くりこまのもみじを見たいなぁ】と言って居たので【明日は二人で迎えに行きます】喜んで居ましたよ」
「それは私も楽しみです、高校は山岳部でしたので柔道や合気道・弓道などは教科の体育で少しやるだけでした。道場開きに伺い彩音先生の優雅な合気道は見とれました。その後進学したので通学時間も忙しく、山遊びも捨てがたく、古武道の時間は無くて~。でもあのお二人がお出でになるなら両親に伝えて置きます、ブラウンさんと啓子さま、ランチをご一緒してください」と興奮したかおるさんが
「親に話しておきます、お食事ごゆっくり」と立ち去る。
「まさるさんたちに、憧れているのか相当傾注しているね」とブラウンさん。
「あのお二人は、男女を問わず老若男女がファンにしてしまう魅力が有るのね」と啓子さんもかおるさんの素振りが好ましく思ったようだ。
食事を終わって、ロビーでコーヒーを楽しんで居ると、かおるさんとオーナーの佐々木社長が一緒に挨拶に来て、めおと道場の話で盛り上がり、社長が是非ランチを提供したいので、まさるたちの了解を取って呉れと頼まれる。
モーニングサービスは、ビッフェスタイルでトーストはオーダーするとトースターに掛けて熱々を持ってくれる。
かおるさんは、昨夜の和服からカジュアルな装いでサービスして居る。窓越しに山のもみじは赤と黄色が朝日と競うように、映えている。
ロビーでお天気の予報見ているとかおるさんが、登山ルックで顔を見せ一緒に外に出る
「栗駒山の紅葉は、登山して上から見るより、山裾から見上げる方がキレイに見えるような気がします、少し車で移動しますので、どうぞ」と駐車場へ向かう。
チェロッキー繋がり
端の赤いチェロッキーのドアを開け
「はいどうぞ、お乗りください」と自分も運転席に乗る。
「チェロッキーでしたか、私も年甲斐もなくシルバーのチェロッキーを足代わりに乗って居ます」
「父は2キャブのランクルなんですが、赤い車貸して呉れよって乗って居ます」
「今日柏木さんが登ってくる国道398は、カーブと坂が多いでの運転好きな方には好評ですよ」
「かおるさんは、毎日その坂をこの愛車で登って通うのですか?」と啓子さんも心配そうに聞く。
「はい、毎日通うわけでは無いのですが、楽しんで居ます」
「それでは1時間ぐらい、紅葉のポイントに連れて行ってくださいますか?」
「はい分かりました、普通は入れないのですが管理協会に登録しておりまして、ラフロードですが工事車両が入るので、しっかり整備されて居ます」
「この両脇もキレイに色づき、華やかに見えますがホテルが閉鎖すると、お客さんは来れないですね」と啓子さんが残念そうに話す。
「お客さんは、赤く紅葉した上に雪が積もった写真を撮るために、登ってくる方もいらっしゃいます」
「なぁ~るほど、その様な楽しみ方もある訳だ、風流だね」とブラウンさんが納得。
「この付近から栗駒山を見ると、裾野から赤と黄色の絨毯の様に見えるんですよ」と道路わきに停める。
赤いスロープはヒョイヒョイ歩けそう
「わぁ~絵の様に赤と黄いろが一面だ、凸凹がありませんね。これは上からとは違うかもしれませんね」
「随分平らな山裾ですね、スキーで滑れそうだわね」啓子さんが大きな声だ。誰も居ない紅葉の道端ではしゃいでいる。
「一応平らに見えますが、ここと同じくらいの広葉樹が茂って居ますから、見た目より厳しい環境ですが、雪が積もれば大丈夫です」
「そうかこの高さは、2メートルから3メートルは有るね、雪が無ければラッシュも出来ないね、高く成る樹木は切るんですか?」とブラウンさんが質問。
「このような作業用の道路は伐採しますが、ご覧になって居る一面の赤じゅうたんの部分は、自然に樹高が調整されている様ですよ」
「一本だけ伸びても、雪の重さで大きく成れないか、雪の重さは半端じゃないからね」とブラウンさんが頷く。
ブラウンさんは雪国育ち
「ブラウンさんのご出身は雪国ですか?」とかおるさんが興味を示す。
「ニューヨークなんだけで、東海岸じゃなく五大湖のソバでニューヨーク州のロチェスターですから、雪には慣れていますが、このような広葉樹林が無いので、紅葉と言う言葉も日本に来て覚えました」
「そうでしたか、ニューヨーク市も寒いと聞いて居ましたが、五大湖近くはこの辺より厳しそうですね、ここから少し進んでも一か所小さい池の傍を通って戻りましょう」とまた進む。
「千歳にも勤務しましたが、10月から5月ごろまで雪が降りますから寒いですね」
「私も何度か行きましたが、外は寒いですが建物がしっかりしているので、沖縄より住みやすいかもね」と啓子さんが感想を述べる。