まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

M&SSの再起動ー39(侵入者拘束)

作戦変更

まさるは車に戻り榊原さんと詳細を詰め、行動開始。めおと道場は煌々とライトアップしているが、県道の両サイドは雑木林で人家が無く外灯の間隔が離れていて薄暗く尾行には都合が良い。
道場の手前から、小道を入り裏側を通って白樺林に入りプレハブの裏で片膝をついて様子をみる。仮設のプレハブには明かりが点き、テレビ放送の音が聞こえて誰かいる感じ

がする。榊原さんが出発前に気配りをして、不審者に在宅を知らす。

 

ターゲットは工事中の門に身を隠すように、うずくまって居たようだが動きだし、這う身を低くして近づいて來る。右手には何か持っているが拳銃ではなく、刃物かも知れない。工事中の現場は、残材や砂利が無造作に積んであるの躓きながら、結構物音を立てながらドアに手を掛け開く。

 被疑者確保

その時、建築中の暗闇から声がする

「チャン・ケンシ―待っていたよ!」榊原さんが低い声と同時に飛び出して来た。

不審者は目の前のプレハブに集中して居て、脇の建築現場を見落としたようだ、狼狽したように右手を振り回したが、榊原さんは軽く交わし後に周り羽交い絞めで地面に押し付け、脇腹に突き入れる、もう動かない。

何とも鮮やかと言うか、ほとんど無抵抗だ。

 

「な~んだそこ迄接近して居たんですか」と、まさるは気付かず呆気に取られていた。榊原さんは、手ぬぐいと捕縄のようなロープを渡しながら
「車を持ってきますから、捕縛して置いて下さい」と駆け出した。

 

まさるも、警部になる直前 研修所で同年配の警察官に逮捕術の講師をしたことを思い出し、猿轡と手足を完全に固縛したが気を失って居るので結構重い。相手が縄抜けを心得てるかも知れないので、後ろ手から首にかけて、足にも掛けて、手を動かせば自分の首が閉まる捕縄術だ。

気付いても逃げることは難しい状態にし、傍らにあったブルーシートを掛けた。榊原さんも2~3分で、めおと道場のワンボックスを寄せてきた。

 榊原さんが見張りを志願

「まさるさん車を貸しておいてくれますかね、奴は気絶してるから逃げることは出来ないでしょうが、ここで張り番します」とエンジンを切った。

「そうですね、東京から4~5時間は掛かりそうだから仮眠は取れますね、私は祖父の車か香織ちゃんの車で、ホテルから此奴の荷物を持って来ますから」と家に戻る。

「あぁ~この車の方が良いかな」と榊原さんが気を遣う。

 

「これは結構広いから後部座席で横になれますよ、その車の方がゆったりして居ますよ」と門の方から道路に出る。

 

県道の奥の方から車が近づくので、脇によると

「済みません、この辺に変な外人が居ませんでしたかね?」と声を掛けてきた。

さっきのタクシーだった、まだ10分も経って居ないが、恐々戻って来たようだ。

「会いましたよ、私も何か聞かれましたが道に迷ったのか、こっちは山だから戻った方が良いよって日本語で言いましたが、何か言いながら降りて行きましたよ」と惚ける。

 

「まだ居ますかね、料金は貰ったのですが「ココウゴクナとか、マッテイロとか、片言でよく分からなくて、怖くなって逃げたんです」と周りを見回している

 

「それは気の毒でしたね、ここは私の道場の者ですが休んでゆきますか?』と聞くと

「姿が見えないから、徐行しながら戻ります、有難うございます」と元気を取り戻し静かに走りだした。

 

道場に戻り、祖父に概要を報告し「榊原さんが車で見張っているのでクラウンを貸して下さい」と言ってキーを借りてホテルに向かう。

 

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ホテルの社長がまだフロントでパソコンを操作して居たが、顔を上げてまさるに会釈。

「お世話に成りました、あれはICPO手配されている悪でパスポートも在留カードも偽物でした。目的がはっきりしないのですが、不法滞在で本庁に引き渡した所です、こちらに彼の荷物が有るような口ぶりでしたが、有りますかね。私が明日上京しますので、序に持って行くことになりました」と詳細はごまかした。

 

「そうでしたか、川渡の方まで何が有るんでしょうね、誰かあの部屋の荷物を持ってきてください、柏木師範は直接犯人を捕まえることもあるんですね」と興味を示す。

 

「今は、道場通いで現場には出て居ません、犯人と対面したのも何年振りかな、偶々隣に道場を造っている榊原さんが中国に留学して、資産家のお嬢さんと結婚し日本に戻ったのです。遺産相続で裕福だと評判がたっていたようです。それを妬んだ話を鵜呑みにしたのが様子を見に来たんじゃないかと言う事です」

 

「あぁ いつも温厚な方ですよね、初心者にも丁寧に教えて良い先生ですよね、そうかあの先生が別の道場を開くんだね、寂しいですね」

「大丈夫ですよ、お隣ですからチョコチョコ行けますよ、ただ八極拳だからね、かなり激しいお稽古が続きますからね」とまさるが首をひねる。

 

「なんですか?その八極拳って」

「あぁそうだねジャッキー?チェンの映画でお馴染みの「カンフー」って言えば良いのかな、榊原さんは空手とカンフーと躰道とか武道に通じているので、頼もしい友人です」とまさるが説明する。

 

「そうですか、カンフーの道場を開くんだ」と思案顔だ。

「何か気に成りますか?あそこの道場を襲っても、まともに帰れないですね、奥さんもカンフーの段持ちで子供たちも猛稽古して居ますから、生ちょろい若い連中は歩いては帰れないでしょうね」」

 

「奥さんは中国の方ですか?きれいな日本語で、道場をこまめに掃除したりお世話して居ましたが、資産家のお嬢様でしたか」と社長も感心して居た。そこへフロントの二人が旅行鞄と小物が入った袋を持って帰って来た。

 

「これが全部ですが、金庫にはこの袋の中身で200万が帯封して18万がバラで有りました、こっちは下着と靴下などで旅行カバンはキーが無いので開けて居ません」と社長に渡した。

 

「小銭は身に着けているのかな、それにしても温泉に200万はちょっと多すぎるな」と首をかしげる

 

「それでは、部屋代は一泊としてそこから引いて、領収書を書いて下さい、明日届けます」とまさるが仕切る。

 

「木村君領収書を書いて、柏木さんに渡してください、恵子さんはお金を数えて頂いて下さい」と社長が仕切る。

 

それぞれが仕事をして、荷物をホテルの名入りの袋に詰めて渡してくれた。現金は帯封したのが2個と16万5000円封筒にいれ、手提げフックを付けてくれた。

 

「この件は外交関係と微妙な事項が含まれていますので、地元警察に届けていません。あの客は一泊して翌日チェックアウトしたことで処理してください。調べが終わった段階で、本庁から県警に連絡させます、色々騒がして申し訳ありませんでした」と礼を言って帰った。

 

まさるは道場に帰り、車を置いて榊原さんの様子を見ようと、表から覗いてみた。

驚いたことに二人で会話している、まさるも中国語は聞き分けられるが、榊原さんが猿轡を外したチャンから聞き取りをしてノートに記入している。

 

「やぁ気付いたようだね、What did you come to?」わざと英語で問うと

「came to kill meと、平気で言いやがるんですよ」と榊原さんが苦い顔をする。