まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

M&SSの再起動ー24(カン兄妹の純真が微笑ましい)

カンさんの告白

カンさんが少し緊張気味に立ち上がり
「本日はこのような会を模様していただき有難うございます、柏木さんとお付き合いを始めたのは昔の話になりますが、お互いが若くて血気盛んな頃、私は香港・マカオの裏社会に精通して居て、柏木さんは国を代表する公務員として、偶然お会いしました。

 

私は東京の学生時代に休学して、台湾から大陸に渡り武道の鍛錬と称し放浪していた時期、妻の父親の会社がピンチになり手助けをした縁で、その会社を任されました」と一息ついてコップのビールを口に含み目を閉じて、回想している様でした。

ユウリンさんのリリーフ

 その時奥さんのユウリンさんが、夫の顔を見上げながら頷くと静かに立ち上がり
「続きは私が話します、夫は当時を思い出している様です」ときれいな日本語で話すので会場のみんなはびっくり。

「当時会社の幹部に悪いのが居て、そそのかされた何人かが、会社の財務報告書を偽造し、外部の人間もいましたが、商品を半額くらいで出荷し差額をリベートとして自分たちの口座に還流させて居たのです」と夫の顔を見る。カンさんが頷く。

 

「私たちが結婚し、会社の財務帳票が複雑改ざんの形跡が有ったので、私が経理関係に携わり、夫が工場の原料から製品出荷まで数値を追って貰いました。

私は地元の銀行に掛け合い、取引企業の立場を強調して帳簿の閲覧、不正な金の流れが判明、日本国の大阪の商社が代金と同じ位の金額を、会社の専務の口座に振り込んでいました」そこで。カンさんの顔を見てタッチ。

 

「済みません、妻に代弁してもらいましたが、専務の身辺を調べて社内の配下にも悪いのが居て、事務処理を2重帳簿にして会計監査をすり抜けており、株主たちに話を通し臨時総会で専務を懲戒処分で引導渡し、訴追で有罪になり資産没収され、損害賠償を請求していたので、国が損害の額の8割がた戻してくれました」

 元専務の逆恨み

元専務は裁判で横領罪になり、会社を恨み

”俺は会社に裏切られた、仕返しする”とか、日本人の風来坊に乗っ取られた”とかアジビラを蒔いたり、変な車が会社の前をノロノロ走ったりするのでカン社長は警察に届け、パトロールなどを実施してきた。

 

会社にも警備部署を設けて、巡回したり宿直性とったりして来た。カンさん(榊原さん)夫妻も社長の自宅近くの会社敷地に、新居を設け毎日食事も一緒にするように密接に警戒をしてきた。

 

決して気が緩んだわけでないが、内祝いで社長宅でパーティーを開き、お開きになった直後に侵入していた元専務の一味がカン社長を刺殺した。義母も腹部を刺され重傷だが助かった。

 

会が解散し榊原夫妻も自宅に戻った一瞬の犯行で、後を追ったが車で逃げ去り榊原さんは悲嘆にくれて、しばらく立ち直れない状態だった。

 

警備担当のシン主任も特命で警備しながら当日招かれ、宴会の解散の瞬間を狙われたのでショックが大きかったが・・・

シン主任は、大きな責任を感じ榊原さんと決着を付けようと、二人で組んで国内の悪のネットに近づき深圳・香港・マカオと追いつめて非合法ながらケリをつけた。

 

榊原さんは、カンを名乗り会社を叔父さんに譲渡し、会社の立て直しとけじめのつけ方を模索してきた。会社も動揺が収まり義母も孫が生まれて、元気を取り戻した。

 

義母は散歩も一人では歩行困難で、初冬に風邪をこじらせて小さなシュウジンの手を握りながら、笑みを浮かべて逝った。

転身の決意

カンさんは奥さんと相談、両親を失い気落ちしているユウリンを元気づけようと深圳を離れることを相談した。

元警備主任も信頼がおける人間だが、事件の後始末で知り合った連中が世間でいうほど悪い分けでなく、誠実に付き合うと身を張ってかばってくれたり、深夜でも電話一本で行動してくれたことが頭を離れない。

 

深圳のその世界から足を洗ったカク・ヘイジュンさんともキチンと礼をして、その後も情報交換し、何となく話すとビッグニュースを提供してくれた。

 

正規に輸送機関が終業後に、海上輸送を模索して企業申請としても、やくざの世界からでは転身できずに悩んでいた様だ。

 

やくざの世界に引き込もうとして居る分けでなく、この間の香港・マカオなど周辺を時間外にも移動できる旅客業で、日中は遊覧やフィシングなど不定期で移動する客が多いようだ。

「大きな会社はあるが、夜間などは断られので個人営業として海上輸送業務免許を取得すれば、確実に伸びる」と保証する。

 

 それからもう勉強して、ボート免許から旅客輸送の許可証など、ユウリンの応援も得て何のか開業で来た。

深圳も香港も海上の方が便利で、マカオを2~30分で移動できる。

 

住まいも、深圳から香港に移住し、同業の先輩ショウーさんや香港のカクさんとも付き合い、フリーな生き方を学び、誠実さと武道で鍛えた技も功を奏してその世界でも信頼される立場になった。

 

ホンコンやくざのカクさんが窮地に落ちた時、同行し空手とカンフーをミックスした技で一瞬で決着し、いつも温厚なカンさんには手を出すなの不文律が徹底してきた様だ。

 

外洋航行が可能なクルーザーを改造し、エンジン・レーダー・無線を強化したが外見では気付かない、頼もしい運び屋になって、それなりの売り上げが有った。

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東京23区と同じくらいの広さですが、シンガポール共和国で首都もシンガポール(^^♪

子供たちは留学

ただマカオにも住まいをキープしたが、いずれも幼い子供の養育には適しないことを痛感し、長男が中学になり長女も小学校の3年から、友人の勧めでシンガポールの厳格なミッションスクールに留学させ、カンさん夫妻が時間が出来ると一泊でも会いにゆきホットな家族関係が出来ていた。

 

カンさんが一通り説明して、席に着いて会場の人たちは波乱に満ちたカンさん一家に付いて、驚きに堪えない顔だ。

 

まさるが、みんなに食事を勧めシュウジンくんに目を留めた。小さくうなずくのを見て

「今日の主役お二人かた一言コメントいただけそうです、シュウジンくんどうぞ」

 

「カン・シュウジンと言います、父がお話ししたのでわたくしは、妹と日本の童謡を歌います、間違うかもしれませんが、お許しください」とハーウインちゃんに目をやる。

 

ハーウインさんも6年生だが身長があり、兄と並んでも見劣りしない。

「カン・ハーウインと言います、まだ6年生ですが日本に来れてすごく嬉しいです」と会釈する。

 日本の童謡

シュウジンくんが、「夕焼け小焼け」を静かに歌い初め、続けてハーウインさんが小さい声で輪唱する、相当練習したのか聞いている人たちがうっとりする雰囲気だった。

続けて「ふるさと」を歌い始める。

 

終わって、拍手がなかなか止まらない状態で、まさるが有難うございます、礼を言う。

カンさん夫妻は手を叩きながら、目にハンカチを当てている。

 

ここでシュウジンくんが
「今日はお父さんが、お爺ちゃんおばぁさんの大事なことを話しましたが、初めて聞いたので感動しています、日本の童謡はシンガポールの日本語教室で教わりました。日本の女性の先生が歌の意味も丁寧に話して呉れて、大好きです。「故郷」や「夕焼け小焼け」景色が早く眺めたいと思っています。みなさま 今後も宜しくお願いします」と丁寧に頭を下げた。

 

並んで立っているハーウインさんも、遅れずに礼をした。

さっきより大きな拍手が続く!