まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

カン・ソンシさんは日本人だった-7(不定期の旅客運搬業)

榊原修二(カン・ソンシ)は家族3人で深圳と香港マカオの真ん中付近の漁村に移住し、ショウ・ボッツ船長のクルーザーで海上旅客運搬業の手伝いをしながら、免許を取ったりノウハウを将来の夢のために教わっていた。

 

ユウリンさんは漁村で、生まれて初めて肉体労働を経験して居た。

 

漁港近くの加工所で、魚を割いて干したり、ボイラーで蒸したりいろいろ初体験で、元々体育系で体を動かして来たので、違和感なく働く喜びを実感していた。

 

シュウジンくんは、加工所の従業員用保育室に預けて、地元の子供たちと一緒に遊んでいる、保育の担当者を配置しているので安心だ。

 

深圳の高級マンション育ちが、浜辺の保育所は別世界のようで真っ黒に日焼けしながら、たくましく育っていた。


お腹に二人目の兆しがあったが、加工所に勤めながら生めるか考えながら、カンさんには打ち明けていない。

 

漁港に近くの田舎だが、近くに産婦人科を兼ねる女医さんが、小児科を開いている事を聞いたので、午後の勤務が休みの日にシュウジンくんを連れて、診察に行って見た。

 

「あ~ら坊ちゃんではなく、おかぁさんの方が大事な時ですね」とズバリお目出度を指摘、診察してもらう。

 

先生はにこにこしながら、シュウジンくんを揶揄いながら

「4カ月過ぎですね、順調ですよ」と告げられる。

 

カンさんも朝早めのバスで中心街に行くので、ゆっくり話す時間もなく、ユウリンさんも体を動かしているので疲れも残って居て、シュジンくんを間に川の字になって寝ている。

 

その日の夜、3人が布団に入ってユウリンさんが電気を消そうと立ち上がると

「ねぇ~ママお医者さんのことパパに話さないのぉ~」とせがむ。

カンさんが驚いて

「何かあったの?」と起き上がる。

 

「忙しそうで話すチャンスが無かったのですが、今日 時間が有ったので産婦人科に行ってきました」

「えっつそうだったの、おめでとう」と言ってユウリンの寝ている方に移動して、抱きしめてくれた。

 

シュウジンくんは、何が起きたのかわからず”ポカン”して、抱き合っている二人を眺めている。

「そうか、変な勤め人になって落ち着かなかったので、悪かったね」とおでこにキッスをして、元の布団に戻る。

 

カンさんは不定期の旅客運搬を手伝いながら、ショウさんから破格の手当てを貰っていた。

 

 ヤミの世界の客もいるので、時々得体の知れないのが小競りあいしたり、大声を上げるのも居たり乗り場が騒然とすることもあった。

予定の無い不定期船なので、夜まで海上を走り回ることも在る。

 

お客が巻き込まれないように、前面に体を張って裁くこともあり司直にゆだねることもなく事を収めるのが、仕事以外の仕事もあった。

 

密かにうわさが広がり、いつもコールされる香港の企業が自家用のクルーザーを購入し、社用として運用する話がショウさんの持ち込まれた。

 

カンさんも一緒に行くので、専属のように出入りしている会社だ。 税金対策かも知れないが、ショウさんが請け負って居た仕事を、社用船で運用任せたい様だ。

 

会社ではショウさんに絞っていたが、自分が地盤を離れる分けにもゆかず、シュウさんの弟は大型外洋に何度チャレンジしていたが~まだその域では無いようだ。

 

カンさんが外洋免許を取得したが、外洋の経験は浅いがショウさんがバックアップすることで、相棒の一本立ちを応援することにし、決意した。

 

その企業は、香港の株式市場に上場している貿易商社で、社内の接待用に取引先の来客の移動や洋上パーティーに使う様だ。

 

これまでショウさんが請けていた仕事だが、香港は海上都市なので自前のクルーザーは価格は張るが、企業として社用車並みの扱いだ。

 

購入時は、ショウさんとカンさんも立ち会い運転したりメンテの手順などメーカーのスタッフから徹底してレクチャーを受けた。

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最新型のクルーザーは操作が簡単でラクチンだが掃除が大変ですよ(^^♪

未だ会社の社員の辞令設けていないが、メーカー側は社員だと思って話をしてくれたが、貿易会社の担当が素人なので(任せるからしっかり聞いて置いてほしい)と任せっきりだった。

 

ショウさんのクルーザーよりひとまわり大型で、カンさんも最初は戸惑ったが型式が新しいと操作も簡単で、見た目より楽に動いてくれる。

 

しかし毎日出勤して、掃除して始動テストし待機する日が続く。

 

あまり静かに停泊していると船腹に貝が吸い付き、いざ出動時に見っとも無いので、その点検はクルーザーを陸揚げして、船腹から船底まで丁寧に手を掛ける、この作業はショウさんの会社で経験しているので、慣れた仕事だ。

 

そんな仕事を見ている会社の幹部はカンさんを信頼し、時々専務や会社の幹部が退屈なのか(1時間ほど港外に出てみましょう)と運転席の脇の椅子に掛けて、海を眺めながら煙草を美味そうに吸う人もいる。

 

大型の取引にも幹部社員と同じ扱いで運転席に待機、脇の応接セットで取引の話が筒抜けだ。

お客と営業の幹部たちが女子社員が用意する食事会も、カンさんも自主的に配膳や片付けを担当、違和感なく契約事務が終了する。

 

そんなときは予め物色して有る静かな島陰に停泊、食事は当然お相伴で美味しいランチを頂ける。

 

会社の都合で、大きい取引先に一日貸し出すことも在るが、操だ手&船長のカンさんは相手の言いなりだ。

 

結構無謀な要請もある。

台湾沖までとか、南沙環礁までとか領海侵犯を平気で指示する輩も数多く、断れば会社が不利益になるかも知れないので、目を瞑って近くまでつけることも在る、日誌には詳細を記入できないので「異常なし」と記入する。

 

たまには前日に、明日予定は(???)指示が出ることも在るが、カンさんは仕事としては楽すぎて充実感が無い日々だった。

 

こんな仕事を3年ほど続け、シュウジンくんも小学校に入学したが街は活気があって賑やかだが、教育環境を危惧した。

 

ショウさんに相談し、会社の担当と3者で検討し、身を引く考えを出した。

 

会社も、ショウさんに委託していた時より3倍以上の経費が掛かっているため、元へ戻すか対策を検討していた様だ。

 

自家用の利用価値が少なく、株主からも指摘されて居たらしい。

 

そんな時カンさんの申し入れで、社内では勤務ぶりは好評なので、クルーザーとは違う形で勤務要請があったが、カンさんは会社勤務を辞退し自分の進みたい夢を話した。

 

「なぁ~るほど、ショウさんのお仕事と同じとは、私の会社とお付き合いは続きますね」とうれしそうに笑う庶務担当だった。

 

ショウさんには前から話して居るので、ライバルじゃなく相互関係を強くして、マカオにも拠点を持つことで、効果を上げる話だった。

 

ショウさんの子供も、深圳からシンガポールに留学している話を聞いたので、カンさんが自由になるころ、ユウリンさんとシュウジンくんを連れて、東京かシンガポールに行くことにした。

 

会社は自家用として購入したが、カンさんが独立するなら払い下げると言うビッグニュースがもたらされた。

 

ショウさんとボート会社が間に入り、まだ新品だが経過年数が4年目で減価償却で中古の相場価格より割安の5年の年賦払いで契約した。

 

会社の専属ではないが、カンさんが個人会社を登録、前の貿易会社のオーダーはショウさんの分担して優先に配船することを約束する。

 

カンさんは海上旅客運搬業の社長になった。

 

住まいも、香港の港湾地区のマンションに移住、ボート置き場に小さなハウスも設け、ショウさんと共同の事務所にした。

 

無人だが電話がある。
どちらかのスマホに転送される仕組みで、不便はない。

 

ユウリンさんも二番目が女の子で恵姫(ハーウイン)と名付け、お守しながら留守番をすることも在る。