武道場のきずな(榊原さんの回想ー4中学時代を顧みて)
「受け身」の重要性
この後も受け身の予定組んでいたが「何かやりたいことが有りますか」と聞いてみる
「未だ「技」を練習して居ないのですが、何カ月位かかりますか?」と聞く子がいた。
リューさんを、眼で追ったが車を取りに行ったらしく、姿が見えない。
「基本的には「受け身」を習得すると怪我や、事故が少なくなりますが、皆さんは入門して何日位ですか?」と聞くと
「約2カ月くらいになりますが、先生方はもう少し基本形を遣りましょうと言われますが「受け身」の先に進めないのです」と不満そうだ。
「そうですね日本では、小学生も大人も同じです最初に遣った「受け身」を3カ月ぐらいやって、体が柔道に慣れてくる6カ月くらから「投げたり・投げられたり」の立ち技から始まります。早く組んで投げたい気持ちは分かりますが、体が投げられることに慣れてくるのが、6カ月ぐらい係るそうです。慣れると言うことは「受け身」で、自分の体を畳に倒れても痛さを感じず、平気で次の動作が出来ることです」
受け損なった勲章
「肩でも肘でもどこを付いても、怖がらずに転ぶときは「無心」で痛さも忘れます。先生のこの耳が変形しているでしょう」と左耳に触る。
「中学生のころ「受け身」が良く出来なくて、頭を先に付いた訳です頭がしびれ耳から血が出ましたが、先輩に揺り動かされ気付きました、気絶したのです」
「肘から先の上腕で受けず、先に手を付いて「ねん挫」したことも、何度も有りました、怪我や故障を防ぐには「受け身」を徹底して稽古し、自然に動ければ怪我が少なくなります」
「転び方を上手になりましょう、家の周りに「ダンゴムシ」この辺にも居るかな?近づくと一瞬で丸くなるゴミ虫ですが、人間も危険を感じたらマ~ルクなれば怪我せずに済みます」と、榊原さんがその場から前回りで肩から回転丸くなりながら、畳を叩く音がポーンと響く。
榊原さんは、何食わぬ顔で
「間隔を確認して、周りの安全を確認して「蹲踞」しましょう、つま先で上手く蹲踞でいない時は踵を畳に付けても良いですが、早く練習して爪先立ちで両手を膝に置く姿勢が出来るようになりましょう」と指導者の顔になる。
「この姿勢から「後ろ受け身」の右を遣ります、蹲踞からお尻をかがとに付けて後ろに重心を移動し、背を丸く倒れ背が畳に付いてから右手が畳を叩きます、先生がもう一度ゆっくりやりますから、見て下さい」と言うと、子供たちが近くによって来たが、きちんと距離を置いてみている。
蹲踞からお尻をかがとに着ける動作は、通常は止めずに流れるように進むので、止めて説明するには相当筋力が無いと、難しいが両腕を前に伸ばして堪え続ける。
背を丸くして首を内側に引っ込めながら、後ろに倒れ畳に付いた瞬間右手が畳を叩いていた。子供たちもその場で蹲踞しながら、真似をしているが横に転がったり、手が先に畳に付いたりバタバタやって居る。
蹲踞からの衝撃は軽いので怪我をすることは無いが、先に手を付く場合は危険なので不安定な子には傍について、体を支えたり途中で止めたり忙しくなる。
子供たちと信頼関係が出来た
組み合って「取」や「受」を始めるには時間が掛かりそうだ。その日は蹲踞から「後ろ」と「横の」を時間をかけ
「今日の練習は、どうでした?厳しいと感じた人は手を挙げて下さい」と聞くと全員がスッと手を挙げたが、笑顔だ。
「厳しかったようですね、次回はもう少ししっかりとやりましょうねっつ」と言うと、皆は笑いながら「うわっ~と」と嬉しそうに
「先生は、ご自分が何回も遣って見せて、私たちに付き添いながら進むので、安心できるんです家に帰ってからも練習出来る気がします」
「そうですか兎に角「受け身」が、一番大事な技だと言うことを忘れないでください」
「今日は終わりです、明日は土曜日ですが午前中から開いてますか、来れる人は待って居ますよ」と言うと、子供たちがほうきや雑巾を持って、掃除を始めた。
ワン夫人が出てきて
「有難うございます、汗を拭いてから夕食にします」と言う。
「いやぁ~食事までお世話になるの申し訳ありません」
「夜に大人や高校生が来るかもしれないので、休憩しながら食べて下さい」と言う。
そこへリューさんが戻ってきて
「夕食も大事だが、ホテルをキャンセルするのも大事だよ、(クインシーさん先に行ってきた方が好いでしょう)」と言う。
「あぁそうですね、夜になる前にキャンセルすれば効率が良いですね、じゃぁ少し待って居ます、子供たちは私が見ていますから」
「分かりました、じゃぁホテルに挨拶してきましょう、リューさん少し待ってください」と更衣室に向かう。
子供たちはワイワイ言いながら、掃除が終わりそうだ。
商売の信頼性
いつも徒歩で通っている、1キロも無い距離を車であっという間に到着
「やぁ~榊原さんお帰りなさい」と笑顔のフロントの女性が
「あれっつ、リュー先生もご一緒ですね」と不思議な顔になる。
「リュー先生の所にお世話になるので、チェックアウトすることになりました」と榊原さんが先手を打って、挨拶する。
榊原さんが、前払いで清算したことを知ったリューさんが、付き添いで付いて行くと言ったのは、日数計算で返金に誠意を見せるか確かめるためだ。
「榊原さんは、前払いなさったようですが未だ一週間しか滞在しない様なので、残金を清算してくれますよね」と単刀直入に切り出した。
「はい分かりました、支配人に確かめます」と奥の事務所に入った。
リュウさんが榊原さんに小声で、一泊の代金を確認し残額を試算する。
中年の男性と一緒にフロントの女性も戻る。
支配人が、残金の半額が限度だと言う、リューさんが怒り
「宿泊していなのに、随分阿漕な商売をするね、ホテル協会の知り合いに確認して見ましょうか?」とスマホを出す。
リュウ―さんが、知り合いのホテル協会の理事長の名前を出すと、支配人は慌てて残り全額を返すことを、言い出した。
「もっと、誠実な商売をしましょうよ」と苦言を言いながら車に乗る二人だ。