反省会がファミリーパーティーに
名護姉弟の母親登場
中年の和服のご婦人が静かに座り、礼をしている。
和服姿を見たことが無い二人は、一瞬誰だろうと不審顔だったが
「あっつお母さんだ~どうしたの~」と、マイケルの声が裏返る。
「マイケル御免、ここからは私に任せて私の妻 名護啓子で二人の母親です」と、紹介
「名護啓子と言います、ケイズの妻で二人の母です、皆様には不束な子供たちを親身になってカバーして頂き大変ありがとうございます」と、また頭を下げる。
「奥様、ブラウンさんの隣に席を作って居ますからどうぞ」と、次長が如才なくリード
スーザンとマイケルも同じだが、鈴木さんもまさる夫妻も口あんぐりで眺めている。
ここでブラウン社長が背筋を伸ばすような仕草で
「大昔、若いころにこの近くに勤務していたころ聞いたのですが、GHQの時代から日本料理を楽しみたい連中が、ここの先々代にお願いして椅子で楽しめる部屋を考えて呉れと頼み、もう少し大きい部屋と二部屋をこんな風に改造して貰ったそうです、それ以来非公式に日本式の食事を出して貰うときは、利用してきた経過があります」
「お父さんは、何処の勤務だったのですか?」と、マイケルが聞いた。
「そうだね、君たちには話して居なかったが東京の横田に3年ほど居たかな」と、啓子さんを見る
「そうですね、私がここに勤めていた時ですから、随分昔ですね」と、笑う。
「だって、私たちも知らないですよ、お母さんが料亭に勤めていたと言う話は初めて」と、スーザンも不満そう
「私は、大学だけ東京に来たのですが、先生の推薦でここにアルバイトで勤務しました先生の親戚筋で、客層が高級だから安心してと、沖縄の両親に手紙を書いて頂き、バイトから続けて2年ほど勤め、ケイズと知り合い沖縄に転勤すると言うので、一緒に戻り結婚しました」
「何だか良くわからないが、お父さんたちの同窓会の様な、変わった宴会になりましたね」と、マイケルが珍しく冗談を言う。
「マイケル、これで安心できる状態になりましたね」と、スーザンがマイケルにビールを注ぐ。
鈴木さんも、ワイン瓶を持ち彩音さんのグラスに注ぐ。
「また川渡に行きたいね、あそこがあるという事は私の救いになるのよ、何かあったら(あそこの露天風呂でのんびりできる)見たいな妄想が有るのよ」と、まさるにビールを注ぐ。
「柏木さんは、東京へ通勤して居られるという事を聞いていますが、ご苦労ですね」と、ブラウンさんがまさるに話しかける。
「距離的には400キロ位ですが、新幹線で約2時間で都内の移動に約1時間ですが、2日連続勤務で効率よく遣らしております」と、まさるも満足気に話す。
「マイケルのLINEで知ったのですが、最近新たに日本の弓も遣り始めたようで日本の侍の様な方かと思っていたのですが、優しいジェントルマンで意外に思いましたよ」と、感心している。
「お褒め頂き恐縮です、私と妻の彩音もマイケルに惚れ込んで、付き合わして頂いています、これはオフレコですが彼の空手と私の合気道を取り入れて、新たな武道を模索して居ました、今回のトラブルを一番気にして居たのは私でした、マイケルには話して居ませんが、私の後継には絶対必要な人材なのです」と、軽く頭を下げる。
「柏木先生、それは私も同じですよ、自分の足元が崩れて行くような焦りが有りましたよ」
「佐々木ポリス ウオッチも焦りが有るのですか」と、ブラウンさんが呟く。
「いやぁ~私も平凡な人間なので、周りは迷惑なようですよ」と、見渡す。
「いやぁ~全然感じて居ませんからご心配なさらずに、伸び伸びやって頂いて結構です」と、鈴木審議官が舌を出しそうな、お世辞を言う。
「それねぇ~曲者なのは、心の中で舌を出して居るんだからぁ~」と、笑わせる。
「あれっバレているのぉ~」と、鈴木さんが笑わせる。
「そうかぁ~こんな明るい職場でお仕事が出来て、マイケルは幸せねぇ」と、啓子さんが羨ましそうに話す。
「現実の仕事場は、もっと厳しい環境かもしれないが、幹部の皆さんのお気持ちをさらけ出して頂き、今日は有意義な時間を有難うございます」と、ブラウン社長が頭を下げる。
和室の下手の方の障子が開き
「本日は、ご利用いただき有難うございます、亭主の山村さおりです」と、中年の婦人が挨拶する。
「啓子さんのご主人も20年以上前になりますか、それ以来ですが今日は皆様に特製のお寿司をご用意しました、これはこちらのサービスですから、ご存分にお召し上がりください」と、サイドの障子が両開きになり、寿司カウンターで職人二人が用意していた。
「うわぁ~ラッキー」と、マイケルが大喜び、ブランさんと啓子さんは笑顔で息子の喜ぶ姿を眺めている。
ここも下は、畳敷きでL字型のカウンターに8人分の席が有った。
「あれぇここは昔は無かったですねぇ」と、啓子さんも初めてらしい。
「昔は奥の方で寿司を造って、仲居さんが小さな手提げで運んで来ましたね」と、ブラウンさんも懐かしそうに見回し、手を伸ばしてカウンターに触り
「まだ新しいですねぇ」と、撫でている。
板前さんが
「そうです、2年経っていないですね、余りここは使わないので汚れないですね」と、ゆっくりした動作で握り始める。