M&SSの再起動-1(行方不明者の捜索)
正体不明の行方不明者
M&SSが規模を縮小して、国内の事案だけに絞って営業して居たが、国内の病院から外国人の医師が行方不明になって、所在不明の情報が有った。
病院サイドが情報を出さないのも問題だが、厚労省に非公式な報告で、持ち出されたモノが薬物以上の物体で公表できないようだ。
勤務して居たのが有名な大学病院で、体内の常在菌の研究で、病院と言うより大学とリンクした研究所に近い存在らしい。
直接、患者の治療等には影響がないが、外国人が一人行方が分からないことは重大な事案だ。
病院の庶務課が、マンション管理会社に連絡マスターキーで立ち入ると、2年近く勤務しながら生活感が薄く、ウイクリ―マンションの様な殺風景な部屋だったらしい。
当初は病気か怪我で連絡が来ないのかと、親心で部屋に行ったが部屋の中には書籍や手紙類など、医師を特定できるもの無いので、庶務課の担当者は不審を感じ、勤務のバクテリア細菌科に通報した。
科長は研究室にゆき、同僚に聞き出して初めて知った。
ヨーロッパの医師
その方面の専門家らしく研究室の閉じこもり、顕微鏡や無菌室で何やらビーカーや試験管で試薬の様な液体などを培養している様だった。
2~3か月に一回フランス語とドイツ語などで書いたレポートで、研究テーマの進捗を提出して居た。
レポートには麗々しくフランス語が並んでいるが、与えたテーマでもないので深く分析もせずファイリングされていた。
国費で留学して居る訳でもないので、役所に申告することも無いので、病院でもお客さん扱いで無口で静かな外人研究員だった。
プロフィールをチェックすると、医師資格はヨーロッパの名のある大学と大学院を収め、医師免許もその延長で取得、系列の病院で研修医を終了、ベルギーやブルッセルの病院勤務の経歴が残っている。
都内のこの大学病院は、ヨーロッパの大学と友好関係にあり、大学サイドの推薦で「常在菌の研究」をテーマにしていると言うので、部局の教授に紹介し一年半ほど勤務。
病院としては、研修医扱いで俸給は支給出来ない形だが、資金繰りは良いのか部屋代は2か月ごとに、2か月分を振り込むので、マンションの管理会社も問題が無かった。
行方不明になって4日目にマンションをチェックし、その日の内に医師免状等も怪しい部分があるので、病院の幹部に連絡した。
当日は、研究所の内部調査で遅くまで追跡したが、書いていたはずのノート類は無くPCはHDDを抜き取り、本人の所在を消すためにやった形跡が有った。
削除したメールの復元を、民間のセキュリティー会社に依頼したようだ。
存在を削除して消えた
警察には連絡して居ないが厚労省から警察庁の上部に降りて来た内容だった。
被害届も、捜索依頼も出て居ないので表立って動く役所は無いが、本庁から法務省管轄の入管に顔写真と入国ビザの写しで問い合わせた。
パスポートの写真と、人相が合致する男がヒットした。
パスポートは香港政庁発行で3日前に福岡から香港行きに搭乗した形跡が残って居た。
複数のパスポートを所持し、自国(ヨーロッパ)ではなく東南アジアに渡航したようだ。
病院の研究室に残って居たPCのHDDを取り外して持ち去ったが
【SSDに気付かずHDDだけを持って逃げたようだ】との頓馬な情報が入って居た。
複数のパスポートを使い分けている割には、デスク管理に疎いのかSSDにはE-mailやドきゅめんとのフォルダやファイルがそっくり残っていた様だ。
その中身は、国家的な重大事案であることが判明する。
関係国は、東南アジアはカモフラージュで本命はアメリカの首都とNYらしい!
パスポートの重複保持は犯罪で、怪しいので佐々木次長はM&SSに出張らせようと考えたが、野村警視を地方に送ったので今の体制は海外迄手を出せないことに気付いた。
取り敢えず鈴木奈緒子警視正を厚労省の窓口に問い合わせ、病院の研究所に事情を聴いて来ることを命じた。
キュピットはマイケルに
誰か気心の知れた人間を付けようと考えたが、傍に居る桜井警部補じゃ頼りない様な気がして
「武道場のマイケルに問い合わせて、時間が取れるなら合流して、二人で行って呉れ」と随分勝手な命令だが、鈴木さんはイツモの事なので
「分かりました、都合が付かない場合姉のスーザンを連れて行きます」とこっちも勝手に決めてしまった。
「あぁその手もあったか、よしっ頼む。あっその時名刺を出して、極秘の訪問であることを知らせ、拡散禁止も伝えて置いてくれ」と切る。
何でヨ~見たいな命令だが、重い感じがして直ぐマイケルの携帯に電話した。
案の定、道場だったがので半日時間を取れるか?と聞くと
「明日、柏木師範のレクチャーなので、道場でチェックして居ました。大体終わったのでデスクに戻る所です」
「じゃ~5分位したら相良課長に電話するから、出かける用意して約2時間後に信濃町駅の病院前で待って居るから、分かった?」
「分かりました」と急いでデスクに向かう