まさる先生の弓道審査
審査は前泊まりで万全
仙台の叔父さん宅に、新婚さんが前泊まりで宮城県立弓道場に7時台に到着、古川組を待って居た。
「そう言えば、段級の学科の出題は理論的な事より、弓道の始めた動機とか目的は?みたいなことかな」
「そうねぇ~動機と目的は出るでしょうね、あとは八節の動作を記述してその中の何かを詳しく書きなさい見たいことかな、あと姿勢も大事なテーマで立ったり・座ったり・歩く姿勢とかで、姿勢と動作から一つづつ説明するだけよ、大体2問くらいよ」
「そんなもんか、そうか小学生も受験するかもしれないな」と、まさるも納得。
そこへ古川の佐藤師匠と受験者3名に、父兄と師匠たちで関係者が6名で、総勢9名が3台のタクシーに分乗して到着。
昇段審査と間違われる
受付で、まさるが名乗ると係が驚いた顔で
「昇段試験は来週ですが~?」と、住所と名前をチェックしていたが
「あっ 柏木まさる様ですね」と、驚いて居る
気付いた佐藤さんが
「あぁ~木村さん この方は段級審査で私が推薦して連盟には通って居ます」と言い
「あっ佐藤先生、失礼しました.。昇段審査の方と勘違いしました」と、丁寧に頭を下げて詫びている。
「木村さん、実射の時ご覧ください審議委員は、何段に査定するか楽しみです」と、まさると彩音さんに目を向けて
「ロッカーに荷物を置いて、着換えましょうか」と、先に立って歩き出す。
古川組の受付も終わり、全員が弓や矢筒をもって移動する。弓道は長尺の道具なので廊下は広く、ゆったりした造りだ。
川渡の道場も、祖父が近隣の道場を見学して、やはりゆとりのある廊下と控室を造って呉れたが
「お爺様の設計で、川渡の道場もキチンと弓の移動などを考慮されて、この道場と見劣りしないですね」と、彩音さんも納得。
「祖父は弓の心得が有るのかと思ったね、柔道場もそうだが設計前に徹底して事前調査を遣って居るようだったが、職人だね」まさるも感心する。
彩音さんは激戦区で昇段
「まさにプロは違うなぁ~と思いました、私は東京と神奈川で審査を受けてきたのですが、結構狭くて弓を立てては歩き難いし、周りを気にしながら移動したことを思い出しましたよ」
「僕は、他所の弓道場は古川とここだが気持ちいいですね、あぁ~道場の隣が控室とロッカールームか、教室見たいな所も繋がって居るんだ」と、ロッカーコーナーに向かう。
彩音さんは控室の長椅子に掛け他の父兄と雑談をしている。
ロッカールームで、荷物を解き道着に着替え袴をつけると、他の受験生は控室に移動し「弓道教本」とノートを出して予習を始、佐藤師匠は、3人の弟子たちに付き添い、出題予想をアドバイスしている。
まさるも白の道着に着換え控室に向かい彩音さんと合流、さっき貰ったタイムスケジュールを見ながら
「最初は学科か、あれっ一時間か、そうだな2問くらいなら、実技は10時過ぎかな」
「柔道などと違って「形」は無いが実射は時間が掛かるのよ」と、彩音先生が一言。
「柏木さんは川渡で道場を経営していると聞きましたが、弓は初めて間がないんですか?」と、父兄の奥さんが聞いて来た。
「高校時代から、柔道とか空手など格闘技を遣って居て、弓道まで手が回らなかったんです」
「そうですか、弓は格闘技とは違うんですか?」
「すこし軽視して居たようで、この奥さんが弓道5段錬士で身近で毎日眺めていると、その奥床しさと言うか弓の厳しさが判り、去年の夏から朝晩集中的に教わってます」
「えっこの奥さんが先生ですか?お優しそうで、そんな風には見えないですよ」
「この人は、他に合気道が4段・柔道も4段で、空手は3段かな道場では変貌しますからね」と、大げさに話す。
「まさか、私は鬼女では在りませんよ、習う人は少しは緊張するでしょうが、指導する場合は誰でも厳しくなりますよね」
「弓は相手が居なくて、自分自身との戦いですからね、気を抜くと【もっと集中してっ】と、気合が入りますよ」と、まさるは笑いながら話す。
「まさるさんだって【そんな受身じゃケガするぞ~】って怒鳴っているんじゃないですか」と、軽くかわす。
「ご夫婦で同じ道場でお稽古できるなんて、最高の環境ですよね」と、納得する。
そんな雑談をして、付き添いと受験生が分かれ学科が始まる。
まさるは学科を10分も掛からず書き上げ、答案用紙を提出席を外す。古川の受験生も30分もしないで、書き上げて出てきた。
高校生は、試験に慣れているので纏め方が簡単だったようだ。
学科は4-5分で書く
道場の脇の控えで、受験生が師匠の注意を聞きながら「弦」を張り「わらじ(麻天鼠マグスネ)」で弦を挟んで擦り上げたり、握り皮(弝-は)に筆粉をフリカケてたり、師匠が礼射をする様な気の使い方だ。
通常12二人立の射場を分割して、5人立ちを二組づつ入りざわついた感じがする。
まさるは11番で二立目の大前(一番目)次に古川の3人が続き落ちに仙台の大学生で、控えで佐藤師匠が
「所作を柏木さんの動作を感じて、遅速が無いように進めてください、中りは気にせず所作を丁寧に動作して下さい」と、最後の注意をして呉れた。
一手(2本の矢)だが、本座につく頃から審査対象らしく、見所がまさるたちの組を見て審査対象の名簿をめくって、確認するような仕草が見える。
実技は皆中
最近は、自分の道場でも跪座で一手の練習を続けているので、何の違和感もなく皆中し静かに退場する。続く4人も1本づつ中て、自信が在った様だ。
彩音さんが素早く近づいてきて
「良かったよ~審査員泣かせね」と、ニッコリと笑顔で迎える。
「ずうずうしくなって、本番でも揚がらないようになったね」と、白っとしてる。