ブラウン一家の紅葉狩り-10(JR一関から平泉駅)
パトロールカーでお迎え
一関駅の改札口の端に、制服の警察官が二人姿勢を正して待機して居る。
野村管理官と三田巡査長が8時丁度位に到着、駅前交番にパトロールカーを預け駅舎に入った。
二人とも列車を使わないので知り合いは居ない様だが、野村警視は見る人が見れば幹部だと気付く。
「やはり目立つが、端っこに立とうか」と言って移動したが、落ち着かない二人だ。
「あぁ~時間通りだな」と腕時計を見ながら観光客を目で追う。
ひときわ目立つ長身のブラウンさんが、啓子さんと話しながら出て来た。
野村さんが素早く前に進み
「ブラウンさんですか?柏木くんの友達の野村です、お迎えに参りました」と会釈する
「おぉ~有難うございます、お忙しい所無理を言って申し訳ありませんブラウンです」
「じゃぁ取りあえず、車に移動しましょうか?」と言って野村さんが
「お荷物をお持ちしましょう」と手を出したが
「これは軽いですから大丈夫です」と歩き出す。
「歩きながら紹介します、こちらは私の相棒で三田巡査長です」と三田さんを紹介。
三田さんが
「三田です宜しくお願いします」と会釈する。
「こちらは奧さんの名護啓子さんです、詳しいことは後でお話しましょう」
野村管理官は
「車と言っても、パトロールカーですのであそこの交番に預けて居ます、2~3分歩いて頂いて宜しいですか?」と遠慮気味に話す。
「大丈夫です、観光は歩くのが基本ですから、遠慮しないで話しながら行きましょう」と颯爽と歩き出す、啓子さんが小走りになり
「ケイズ、そんな大股で軍隊じゃないですから、ユックリ行きましょう」と窘める。
奥さんの一言
「オ~失礼しましたレディーが二人も居たのに、気を遣わず申し訳ありません」と詫びる。野村さんも笑いを堪えていたが、三田さんが吹き出しそうに、赤い顔して横を向く
「こらっ三田君失礼ですよ」と野村さんが笑い出し
「失礼しました」と言いながら、交番の中に声を掛ける
「悪かったね、お客さんを乗せて帰ります」と言いながら三田さんを見ると
「有難うございます、問い合わせが有ったら8:15に出発したとお伝えください」と挙手の礼をする。
「了解しました、野村管理官殿」と若い警察官が飛び出して来て挨拶をする。
野村さんが後ろの左ドアを開け
「どうぞお乗りください」とブラウンさんを乗せる。三田さんが右側のドアを開け
「奥様こちらからお乗りください」とドアをドアに手を掛けて待って居る。
「三田さんでしたね、有難う」と言って会釈しながらお尻から腰を下す。
交番の二人の警察官も、ブラウンさんの雰囲気が気になるらしく、姿勢を正して車道に出てパトロールカーを誘導しようとしている。
署のナンバー2がドアボーイの様に気を使って居るので、別格のお客だと認識した様だ。
交番勤務も気を遣う
「三田さん一旦駅の方から右に回ってください」と駅前の車の流れを制御して呉れた。
「有難う、助かったよ」と野村さんが助手席の窓を降ろして、礼を言う。
「管理官お供しますか?」と野村さんと同じころ移動してきた警部補が、一緒に行きたそうな顔で尋ねる。
「有難う、三田君の通勤路だから問題ないだろう」と三田巡査長の顔を見る。
「高橋警部補有難うございます、何かあったら困りますので慎重に参ります」と車の流れを見て、スッと流れにのる。
学生の雰囲気だが柔道の猛者
三田さんは柔道4段で、地方採用で3年目だが昨年東北管区の柔道大会で優勝しスピード昇格で、交番勤務を1年半で巡査長になったエースだ。
「野村さんは、まさるさんとは東京でご一緒でしたか?」とブラウンさんが質問。
野村さんは体を90度回して、ブラウンさんの顔を見ながら
天神町の復讐劇
「柏木警視は、若いですがキャリアで入庁して同じチームで8年ほど仕事しました」
「まさるさんは見た目は温厚そうですが、芯は強いようですね」とブラウンさんがまさるの友達にズバリ聞く。
「しっかり為さっていますね、僕たちは彼が高校生の時に出会い、大きなミッションを処理したのですが、その時彼は7人のやくざ者を10秒前後で倒し、ご自分はかすり傷も負わなかったんです」
「やくざなら刃物や拳銃なども持って居るでしょう?」と九州のやくざの世界を認識して居た。
「ボスらしいのが、懐に手を入れた瞬間に3メートル位の距離を飛び蹴りで、顎を蹴り上げ着地はその方の上に膝を落として、完全に制圧しました」
「今は180センチ以上ありそうですが、高校生なら未だ体が出来て居ないでしょうに」とブラウンさんも元軍人らしく、読みが深い。
まさるの経緯も気になるブラウンさん
「「そうですね、いまより身長も体重も小柄でしたが、飛び蹴りの瞬間空中で回転し真上から膝を使って居ますから、相手の肩は完全に壊れ半身不随になりました」
「野村さんたちも一緒なのに、手を下さなかったんですか?」と不審に思ったようだ。
「実は私たちも周辺に配置したのですが、公式には自分たちは東京に在勤中で、当日はその場は民間のまさるさんとやくざなグループの抗争も無いことになって居るんです」
「凄い話ですね、まさるさんは何か因縁に関わって居たんですね」とブラウンさんが想像を逞しく突いてくる。
「まぁ後で聞いて見て下さい、ただ言えるのは現状の復帰作業は、我々のチームが血痕一つ残さず処理し、まさるさんは最終便で羽田に戻りました」と野村さんが交差点の標識を見る。
「あぁあの信号を曲がるんだね」と三田巡査長に確認する。
「はいそうです、左に曲がると最初の観光スポット”毛越寺”です、右に曲がります」と徐行する。
「左側の観光案内所前に停車して居るタクシーが、毛利さんですね」とその後ろにパトロールカーを止める。