まさる先生も弓道は段級審査会に備えます
初めての他流試合
誰が見ても4段以上だと思われる射手だ。
風格が有り殆ど皆中する。柔道5段と空手4段合気道は14~5年で、4段を認定されているので、武道のすべてに通じる動作は、弓道の所作と同じで自然に動いている。
まさるは自分の道場が練習場なので、肝試しじゃないけど他所の弓道場で引いて見ることにした。
小野寺さんの管轄内の、古川の屋内運動場内の弓道場を紹介して貰う。
当日は土曜日で、小野寺さんが付き添いの形で受付に申し込んだ。弓道場の管理運営は地域の弓道関係者に委ねているので、まずそこで初心者が受験する手順などを問うた。
休日なので、子供たちも練習するらしく集まって来ていた。
道場の5段錬士で、佐藤さんが小野寺さんとまさるに会って、練習と審査の申請などを丁寧に教えて呉れた。
県内の審査は、仙台と県北の佐沼で行うようで、大崎は仙台の方が早く行けるので、県の武道場で実施するようだ。
3人の段級審査と一緒
最初に、次の審査に行く高校生2名と一般の女性が1名予定して居て、たまたま今日審査前の流れを本番に近い形で、遣ることになって居た。
屋内弓道場だが、10人立ちの大きな射場で、半分を仕切って審査候補生と、小中学生の子供たちが分れるように、射場を使い分けていた。
子供たちは、未だ的前に立つ段階では無く、先輩の2~3段くらいの若い人に、巻き藁で教わっている。道場の中では無駄口やフザケルことを禁じているようで静かだ。
佐藤錬士が3人の審査予定者と、まさると小野寺さんに
「最初は、いつものように3人で入場から本座・射位と進んで一手射て下さい、柏木さんそれで宜しいですか?」と聞く。
「はい、皆さんの所作を見させてください」と、言うと佐藤さんが3人に向いて
「この方は、柔道・空手・合気道と4~5段を取得し、川渡で道場を経営している方です、弓道だけは奥さんが5段で錬士を目指して居るそうです、弓は審査を受けて居ないので皆さんと同じ日に、ご一緒するかもしれませんね、では3人で一手(ヒトテ)射てください」
審査組は、全員が半袖の道着なので、本座で跪坐をし揖をし直ぐ射位に進む、佐藤さんが指導しているのだろう、3人とも落ち着いて体配も節度在り、無駄な動きも無い。
3人とも、甲矢はは外したが乙矢は中て(アテ)ゆっくりと下がってくる。ホッとした顔に戻るが、話はせず本座の後ろに控える。
佐藤さんが、まさるの顔を見て
「如何します?最初お一人で一手射ってみますか?」と、誘う。
初めての道場
「はいっ、お三方の所作を真似て見ますか?」と、甲矢と乙矢を選んで弓を手にする。
小野寺さんも、緊張した顔で見所から見ている。
まさるも、白足袋に黒の袴で、白の道着を着用してチョット老けた初心者だ。
歩き出しも、右からすり足で、歩幅も小さく姿勢も背筋がまっすぐで、視線は前方を自然な目線で見ている。
最初の審査は、審査対象を「無指定」にすると審査員の判断で、段級が決まる。
甲矢も音矢も的の中心近くに、ポンポンと軽い音で吸い込まれる。
佐藤さんが「う~ん」と、唸って
「4~5段だなぁ~」と、小野寺さんの顔を見る。
「出来上がって居ますねぇ~一芸に秀でる人は何でも凄いなぁ~この人は三芸かぁ」と、弓を引かない小野寺さんが、感嘆している。
3人の審査予定者は、口あんぐりで
「先生と同じような残身で、矢速が速くて凄いですねぇ」と、話し合っている。
まさるも、本座の後ろまで下がりホッとしたようで
「やぁ~疲れますね」と、小さな声でニッコリして、小野寺さんと佐藤さんに会釈
「柏木さん、東京で受かって居たんじゃないですか?」と、聞いてくる。
「いやぁ~東京じゃまだ引いて居ませんでしたから、川渡に道場が出来てから奥さんにお願いして教わって居るんですよ」
「それじゃ~未だ半年くらじゃないですか?」と、小野寺さん
「あぁ~そんなもんですね、朝晩1時間づつやって居ますが、二人で交互に矢取りをして、効率よく的を4っつ掛けて8本射って矢取りに行くんですよ」
「な〰る程、合理的で矢も痛みませんねぇ」と、佐藤さんも感心する。