まさる先生のブログ

新たな武道の境地を目指します

M&SSの再起動ー42(決着は頼もしい後輩に任せた)

機動車の後輩をお出迎え

新築現場のプレハブ前に来てみると、ブルーシートが気になり捲って見たが変化はない。戻って道場のワゴン車に乗り込み、シートを斜めにして目を瞑る

 

何とも長い一日が過ぎ午前2時半だ。
しつこい中国マフィアだ中東の国が関与しているのか、川渡がマークされたのかチャンの個人的な行動だったのか、心配の種が残る。

ウトウトしたときスマホが着信(いま古川を降りて西方に向いて走行中)とLINEで来た
折り返し(お疲れ様、20~30分くらいです)と返信

 

ワンボックスのエンジンをかけ、静かに県道に出る。そろそろ祖父たちも戻るころだが国道の入り口までゆっくり走る。

国道も通行量が無く、クラウンがゆっくり曲がってきて、反対車線に止まる。

「もう来るのか?」と祖父が

「ちょっと前に古川を降りたようで、退屈なので降りてきました、女性陣が気が付いて責められるので離れて来たところです」と本音を言う。

 

「そうか、送り出すまでは気づかれないようにと思っていたが、気付いたか?」と祖父

「いや~まだ骸になったとは言っていません、機動車に載せてから話そうと思います」

「そうだな それが良い、兎に角先に帰っているから」と言うと、榊原さんが

「私も降りてお待ちします」とドアを開けた。境原さんがドアの外で

「有難うございました、お陰で傷は落ち着き、痛みも薄らいできました。有難うございました」と礼をする

「痛みが治まったのは、薬のせいで切れてくると痛くなるかもしれないよ」と注意しながら車を発進させる。

「こんな夜中に病院が開いて、居ましたか?」とまさるが気にする。

「え~開けて頂きましたが、看板は内科・小児科で驚きました」

「あぁ個人医院でしたか」

「外から見ると暗いのですが、診察室は明るくきれいで、ホッとしました」と本音を。

 

「内科でしたが、ガラス戸の棚からアルコールやガーゼやピンセットや手術刀など外科の治療セットをテーブルに並べ、目でチェックして居ました。

本格的な外科の治療室に変り、私を診療台に載せ(柏木くん流しの脇の湯沸かしから湯をボールに注いでくれ)と声をかけ、お爺様を君付で呼ぶので仲がいいんだな思いました。
お爺様も気軽に棚からボールとタオルを出し、湯を注ぎ準備していました。傷の縫合も手際よく、お爺様にガーゼを浸してというちアルコールに浸し、ライトの角度を変えてとか、まるで看護婦に言うように指示するんですよ」

治療が終わり、用具を片づけながら
「風呂は傷を押しても痛みを感じなくなったら大丈夫で、その時抜糸するから来なさい。こんな夜中は受け付けませんが、この人が付き添いなら仕方がないので対応します」笑う。

「そうだな、来るときは四合瓶一本忘れないように」と念を押す

「又飲む気か、今度来るときは「こも被り」でも何でも持ってくるよ、昔の木阿弥には戻りそうに無いから大丈夫だろう」とお爺様が笑っている。

「何とも磊落な問答で戸惑ってしまいました」と吊り下げた左腕をなでる。

 「不思議な関係ですね」とまさるも考え込む。


「いやぁ帰りの車で聞きましたが、波乱万丈のだったようで、東京の総合病院で外科部長を務めていたが、奥さんの病気治療で鳴子に借家して治療に専念、落ち着いたので古川の実家近くに、奥さんの治療用に内科・小児科を開業したようです。

それでも快方には向かわず50代で先立たれ、ショックで医院は閉じたままその後は酒浸りで仕事は出来ず、看護師も離れ荒んだ生活に落ち込んだ。

お爺さんは鳴子で静養すれときも、全面的に支援し時々見舞いして、古川に戻る時も身近なるので応援した。土地は親の代から大きな屋敷だったので、一部を用地にして工事一切をお爺さんが関わって仕上げた。

 

地元では、内科・小児科だが本業は看板にない外科が専門だったので、なんでもできる掛かりつけの頼れるお医者さんで信頼があった。

祖父は山田医師の状態を承知して居るの、長期作戦アル中状態が精神的なダメージをクリアすることを考えて来た、時間を置いて時々屋敷の清掃・整備を従業員を伴って片づけて来た。
先生は他人に暴言・暴力を振るう人ではないので、隣り近所でも当たらず触らずで距離を置いていた。

一年くらい経過して積極的に友人のリカバリー作戦に乗り出す。お爺様がショッチュウ尋ねて話し、家の周りだけでなく屋内も整備するため、本人を外に誘いその間に建築業の長男正一さんとその配下とリホォームの子会社を動員して、表も屋内も真新しく仕上げた。

その日はお爺さんが、鳴子の江合川添いの「農民の家」と言う、民間組織の温泉設備を予約した。一定の料金で一日中滞在でき湯と団らん室は自由に使え、食事は種類が豊富で、農家の人たちは自炊でも湯治できる施設だ。

酒から切り離しの一歩目で、夕方 酒が抜けた先生は歩行は覚束ないが、顔色が明るくなり言葉もはっ切り喋る。医院の手前に理髪店が有るのでその駐車場に入る、ちょうど奥さんが出て来たので「山ちゃんが床上げなので綺麗にしてください」と冗談を言いながらはいる、

「あぁら先生顔色が良くて元気になりましたね」と理髪椅子に導く。

ご主人も隣のお客が終わり
「それでは一年振りの散髪を遣ってみますか?」と伸びほうだいの髪をバサリバサリと鋏を入れる。

髪を切ると若返り一層明るい顔になる。

みんなに冷やかされながら車に乗り

「一年もカットして居なかったんだな、おやじ良く覚えていたね」と微笑む。

車で医院の駐車場に入ると

「随分きれいなったな?」と呟き、待って居た正一さんが

「お帰りなさい先生!」と祖父の車のドアを開けて手を貸す。

 

「おぉ正ちゃんがやって呉れたのか?」と笑顔になる。

「まぁそうですが、家の若いのが手伝ってくれました」

先生は車の外に立って、周りをゆっくり眺めていたが

「信ちゃんに気を遣わせたようだな」と祖父の顔をマジマジと見つめ。目を潤ます。

「な~に山ちゃんは病気なんだから、気にしなくて良いよ、中に入って落ち着こう」と先に立って玄関に入る。

家は祖父が建て、一年前までは治療居た医院だが掃除をしただけで蘇った。

「あれっここは我が家だったかな?」と言いながら、玄関から待合室にしている広間と診察室を眺めている。

居間やキッチンも掃除しながら、アルコール類は一切始末し、流しや床に散乱して居た酒やビールの空を始末、カーテンも明るいもに変えた。

ここの部分は、祖父が機動車が帰路につき家族に経緯を説明した時、隠す事でも無いのでその経緯を丁寧に話し、頼もしい友人の存在を披露した。

榊原さんの傷も外科専門医にかかれば、当然刺し傷だから警察に通報される事案だ。

痛くもない腹を探られるのを避けるたむには、非公式な治療は有難い。

 

国道もほとんど交通量が無く、県道は30分で2台だけだった。

 その時、国道から黒い車が曲がってきて、静かに止まる。

黒ではなくブルーの濃い機動車だった。

役所の後輩は礼儀正しい

「柏木警視久しぶりです」と二階堂警部が直立で挙手の敬礼をして居る。

斎藤警部補も直立で挙手の敬礼だ。

 

まさるも軽く右手を上げて、挙手の礼をする。

「ここは田舎だから、気楽にして呉れ。ごめんなこんな時刻に四百キロも走らせて、申し訳ない」

 「いや~とんでもないです、仕事ですしドライブも好きな方ですから、お気を使わないでください」榊原さんも、丁寧に頭をさげ「その節はお世話になりました」と挨拶。

「あぁカンさんもご一緒でしたか?」と懐かし気だ。 

「厄介な奴が出没して戸惑ったよ、まぁ現場で話そうか」とワンボックスに乗る。

「ついて行きます」と機動車に戻る。

まさるもエンジンをかけ静かに発進。

 

道場の前に祖父が待って居たが、会釈し徐行して榊原さんの建築現場に入る。榊原さんが素早く降りて機動車を誘導し、斎藤警部補も降りてバックで誘導する。東北道は斎藤くんが運転してきたが、誘導もテキパキと無駄がない。

 祖父も気になって、まさると一緒に現場に行く。二階堂警部が慌てて挙手をして
「二階堂です。お世話になって居ます」と今度は会釈する。斎藤警部補も学生の様に歯切れよく「斎藤です」と小声で挨拶する。

 

「確かにここを見ればちょっと打ち身で、口内に出血は有りますが、自然死ですね」と言いながら、斎藤くんが持ってきた収納袋を解き、足から袋にいれ腹部に氷袋を2個載せ両脇に2個づつ入れ、二人の現職が合掌する。参加して居る三人も静かに瞑目合掌する。

 

「昼前には帰りますが、嘱託医の検視を受けて火葬になると思います。一応身元不明者で処理になると思いますが、樹木から落下?で路傍発見にしますか?」

 

「その方が当事者名が残らなくて好いのだが、動機とか行動に不信が残るので、どこで手を打つか難しいなぁ」と元M&SSの先輩として、妥協できない思惑を滲ませる。

 

「そうですね、検視官とか我がチームの幹部には言い訳は利きませんが、出発前に「不正外交官事案の延長上だと鈴木審議官に厳命」されてきたので、路傍者扱いを進言しました」と恐縮する。

 

「M&SSの創始者が事の重要性を認知して居るんだね、それではさっきの二階堂くんのストリーで決着付きそうだね」とまさるが少し引き

 

「現状の本筋も記憶に入れて置いて欲しいが、いいかな?」

「本筋も知って置いた方が後学の為にお伺いします」

「あとでスマホの画像を転送するが、明けて昨日の昼過ぎに当事者がタクシーでこの建築現場をした時からボロが出ていたんだ。不審者がタクシーから顔を出してこの付近を撮影して居たのを榊原さんに目撃され、帰りを尾行されてホテルは監視下に入た」

 

「凄いですね、プロの仕事ですね小説以上だ」と二階堂くんが感心する。

 

「それはそうだよ、君たちの同僚と言うか先輩と言うかこの榊原さんが家の工事に関わり、タクシーの客は深圳マフィアの札付きの殺し屋で、榊原さんは昔その筋の知り合いから、チクられて居て一目で思い出したらしいよ。本人は麦わら帽子で首に手ぬぐいの田舎の叔父さんスタイルだから、不審者としては眼中になかったようだが~」

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近くの公園に八重桜が満開でした(^^♪

祖父がその時

「そうかあのタクシーが、そうだったのか」と合点する。

「現場で車を貸してくれと言い出すので、キーを投げて貸したが1時間くらいかな?」と榊原さんの顔を見る

「そうですね、それも温泉街の一番手前のホテルでしたから、上手く行きました」と榊原さんが初めて発言する。祖父はこの場の雰囲気に気を使ったらしい。

 

「そうか今は榊原さんに戻ったんですね、カンさんが」と二階堂くんが懐かしそうだ。

 

「じゃぁここからは榊原さんが主役だから」と促す。

「はいっ ホテルの前に見覚えのあるタクシーがいて、客が中々降りずに運転手とやりとりして居ました。道路に止まって居る分けにもゆかず、さりげなくホテルの駐車場に入り、身を低く待っていました。運転手は仕方なそうな顔で一緒に降りてホテルに入り、15分くらい待っていました。運転手は何かブツブツ言いながらタクシーを出して、温泉街に向かうので直ぐ接触するわけに行かずタクシーを付ける事にしました」

 

「お借りした車は綺麗なクラウンなので、薄汚れた自分は目立つの隠れるように身を低くしてタクシーを追いかけ、駅前広場で客待ちになったところで、話を聞けました」

「客待ちの車が3台ほどいたので、チップを出して助手席に座られしてもらい、ことばがカタコトで最初は「めおと道場」までと言いながら、隣の建築現場の写真を撮るとか、駅まで戻ると言い出し、狭くてUターンできず結構先で回ったら、走り過ぎだとか、いきなりこのホテルに泊まると言い出したり、フロントまで一緒に来いとか結構厄介な客でした」

「どこから来たとかは言いませんでしたか?」二階堂警部。

「あぁそうですね、運転手は言葉が英語か中国語か分からず、半分くらいしか聞き取れずホンコンとか言ったようですと言いましたね」

「私は、夜になって行動すると判断し、まさるさんの帰宅を駅に迎えに出て状況を報告しようと鳴子から離れました」と榊原さん。

 

「じゃぁこの辺から続きますが、古川からの車中今の話を聞き、榊原さんが狙われていることを確信しました。夕食後投宿したホテルの社長が道場の塾生なので、事情を話し外出した時電話を貰う約束が出来ました。榊原さんと二人で待機して居ると予想通り9時ごろ外出、途中でタクシーを拾いここの手前で降りて、忍び寄って行くので山の細道をで先回りして、確保して固縛しました。

侵入者を確保したが、トイレ時に上着の裏に縫い付けた細い両刃の短刀で襲われ、榊原さんが左腕を刺され、二突き目を躱して手刀を首筋に打ち相手は避けきれずに卒倒しました。現場写真は残しているんだが、首筋の打撲は隠しきれないだろう」とまさるが全体を締めくくる。

 虚実2通の報告書!!

「有難うございます、虚報よりリアリティーが違います、一応二本の報告書を提出上部の判断に委ねます」と会釈する

「勝手な要望を引き受けていただき申し訳ない」とまさるが上司として礼を言う。

 

「いえこれは職務ですから、お気に為さらず任せて下さい、この件でこちらにご迷惑が掛からないように仕切りま」と二階堂警部がドアを背に立つ。斎藤警部補は道路側に立ち同時に挙手の礼をする。まさるも軽く右手を上げ会釈をする。

「こちらに来るときは噂に聞く「めおと道場」の露天風呂を楽しみして居たんです、こんど来るときは機動服ではなく、軽いいでたちで来ます、警視 奥様に宜しくお伝え願います」とドアを開ける。

「おぉ彩音を承知して居たのか?」

「はい警部補時代に所轄で係は違うのですが、キャリアの先輩としてお話を伺いました、ご長男の誕生でお忙しいでしょう。次回は機動車じゃなく新幹線で来れるように、段取りします、長話で失礼しました」とまた挙手をしている。

東の空が少し白んできた。

斎藤警部補が聞こえたようで、小さい声で「オーライ」と短く合図する。

残った三人の男たちは静かに合掌して、頭を下げる。

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大崎j平野に雲がなびき何ごともなく夜明けの知らせだ

このシリーズの最期で少し長くなりました有難うございます(^^♪